劇場公開日 2019年1月19日

  • 予告編を見る

「女 命 自由の始まり」バハールの涙 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5女 命 自由の始まり

2019年2月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

限りなくノンフィクション。
現在進行形の戦いと過去に起きた凄惨な経験を交互に見せるつくりが身に刺さる。

女性記者マチルドと女性兵士バハール、立場は違えど目的を持ち勇気を持った行動とその境遇はどこか似たところがある。
力強いバハールの瞳は、大きな痛みを抱えて時折どこか虚ろになる時も。
それでも仲間を鼓舞し、情に厚く作戦を引っ張る姿が本当にかっこいい。
戦場の歌声に胸が震えて涙が止まらなかった。

平穏な生活がいきなりぶち壊され、人間としての尊厳をことごとく削られる恐怖。
バハールの過去はその場の女性皆んなの過去で、戦う人も死んだ人も行き場のない人もそれぞれ壮絶な経験をしているという事実が辛かった。
数少なく差し伸べられる手を掴めるかどうかのせめぎ合い。「逃げて殺されるなら本望」か…。

こんな状況でも新しい命が産まれて、まさに死が生を産む瞬間を目の当たりにする。
母は強し、なんて簡単に言えたものじゃないな。
もう一人のバハールがどうか幸せと平穏のある未来を生きていけますように。

真実を伝えること。マチルドが放った世間の人の反応には耳が痛かった。
日本人記者が捕らえられるニュースが流れても「自己責任」だと冷たく放す世論に私もわりと同意だったから。
ワンクリックで済ませていたことをほんの少しでも知ってしまった時、どうしていいか分からなくなる苦しさに襲われる。

物語がひと段落しても戦いは終わらない。
ISによる暴虐は今なお続いていて、この事実にどう向き合えばいいんだろうか。知ったところでできることなんて何も無い。
それでも、伝えてくれる人がいる限り受け取りたいと思うようになった。
バハールの拳に、マチルドと同じく生命力を貰った気がする。

KinA