劇場公開日 2019年8月23日

  • 予告編を見る

「ドラえもんがいない街で爆発する虚しい怒り」ドッグマン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ドラえもんがいない街で爆発する虚しい怒り

2019年3月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

廃墟のような小さな街でペットショップを営むマルチェロは別れた妻と暮らす娘に会うことが唯一の楽しみの優しくて気弱な男。その人あたりの良さで一定の信頼を得ている彼の悩みの種は友人のシモーネ。毎日どこかで騒動を起こす厄介な乱暴者のシモーネに突然呼び出されてはコカインを買いに行かされたり、空き巣の手伝いをさせられたりの日々にうんざりしていた頃、シモーネからまたある相談を持ちかけられる。必死で抵抗するマルチェロだったが仕方なく引き受けてしまい、それをきっかけに彼の人生は一気に暗転する。

要するにドラえもんのいない『ドラえもん』。”お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの”を貫くシモーネに支配され、どこでもドアがない絶望的な街の中で追い込まれていくマルチェロの姿がものすごくイタイ。遂に怒りを爆発させるマルチェロの魂の叫びすらも屍のような街に吸い込まれる、その乾いた陰惨さが実にラテンな不快感に満ちていて印象的でした。

よね