劇場公開日 2019年6月1日

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「表層的な家族関係が誘拐事件を発端に崩壊していく恐ろしさを巧みなストーリーテリングで描く秀作」誰もがそれを知っている NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5表層的な家族関係が誘拐事件を発端に崩壊していく恐ろしさを巧みなストーリーテリングで描く秀作

2019年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

この映画の秀逸な所はスペインの長閑な田舎の風景を背景にしながら、家族の表層的な幸せが壊れる過程を執拗なまでに人間性の暗部(猜疑心・金への執着etc.)にスポットライトを当てながら描いている部分だと思う。

ラウラ(ペネロペ・クルス)の娘が解放されても、事の全てを見抜いたラウラの姉が夫に深刻な表情で話す場面で映画は終わる。家族の崩壊を予想させるアンハッピーな終わり方だ。

それにしても、やっと手に入れた自らの農場を手放し、(妻にも愛想を尽かされ)ラウラの娘の身代金を払ったラウラの元恋人(ハビエル・バルデム)のベッドの上に寝転がって浮かべる笑顔の意味するモノは何だったのだろうか?

解を観客に委ねるアスガー・ファルハディ監督の書き下ろした脚本の秀逸さには驚くばかりである。重厚な作品を堪能させていただいた。感謝である。

NOBU