劇場公開日 2019年8月9日

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「女の子たちもピクニック気分で集会に参加してるのが印象的」ピータールー マンチェスターの悲劇 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0女の子たちもピクニック気分で集会に参加してるのが印象的

2019年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 冒頭ではジョセフという青年がナポレオンとの戦争で生き残った姿を描いていた。進軍ラッパを吹き鳴らし、重傷を負い、倒れそうにながらも自宅へと帰路につく。ジョセフがボロボロになった赤い軍服を最後まで着ているのだ。そして、雄弁な改革派の論壇ヘンリー・ハントが演説を始めようとしていた。

 大集会が始まるまではかなり退屈だったし、登場人物がやたらと多いし、全く覚えきれない前半から中盤。目立っているのがヘンリー・ハント(ロリー・キニア)とジョセフだけなので、ご覧になる方はこの二人だけでも覚えておいた方がよさそうだ。ジョセフという名の人物ももう一人いるからややこしい・・・

 集会にいたる原因も、疲弊しきった庶民の生活。食料不足、高い失業率、そしてマンチェスターを中心とするランカシャー地区選出の庶民院議員が2人しかいないという1819年の状況。大工場が立ち並ぶ光景はいかにも産業革命後のイギリス!といった雰囲気なので、タイムスリップした感覚に陥ってしまいます。時代が時代だけに成年男子の選挙権を認めさせようという運動がメインだ。今の日本だったら一票の格差がかけ離れているとして、即憲法違反の判断がなされるのだろう。

 何といっても行進をかねた集会参加の様子が素晴らしい。みんな楽しそう。ラッパ楽隊の楽器も当時を再現したのか、見たこともない形をしている。そして広場には6万人。背景には巨大煙突が立ち並ぶ工場群。そしてモブシーン。拡声器もない時代ではどんな演説を見せてくれるのかとわくわくしてしまうのですが、あ、案外しょぼい。でも、群衆の心が一つになるかのような、そんな瞬間があったのだ。そしてメインのハントの演説も数分で遮られ、自然発生的とも言えるくらいの義勇団の鎮圧行動。サーベルを振り回し、何人もの一般人が斬り付けられる。さらに政府直属の騎馬隊もそれに続く。

 負傷者400~700人。18人が死亡するというイギリスの黒歴史が刻まれた。現在の香港のデモにおいてもそうだが、無血革命を試みても武器を持った軍隊・警察が押し寄せてくる。軍隊とは国民を守るために存在しているのではない!国体を維持し、戦争をするだけなのだ!こうした歴史が証明してくれるはずであり、現代に置き換えても同じことを繰り返しているのだとわかる。それを描いた映画も凄いが、予算の関係やエキストラの都合にも苦労が見られるし、退屈な場面はカットしないと観客も疲れるよ・・・

 ちょっとわからなかったのがジョセフの生死。ナポレオンとの戦争で生き残ったのに、こんな虐殺事件であっという間に殺されたという皮肉も描きたかったのだろうから、“死”の方に15シリングだけベットします。

kossy
ワンコさんのコメント
2019年11月25日

なっがい映画でしたね、これ(笑)。

ワンコ