「7マイルの冒険 (ジェット機の巡航高度=10800m)」イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
7マイルの冒険 (ジェット機の巡航高度=10800m)
科学的な知的欲求に命を懸けたジェームズ・グレーシャー。深海に潜ったり、戦火を掻い潜って大航海したり、凍った大河をソリで渡ってシベリアまで出かけたり、ファミコン並みの集積回路だけで宇宙空間に飛び出したり。当時の技術水準からすれば、無謀で命知らずな大冒険に挑んだ科学者達の物語って、無条件に萌えてしまう訳で。
当時の王立協会は軍事目的だったり、他の欧州列強を出し抜くための研究には、ドバドバ金をつぎ込んだりしてました。何か今も変わらんよね。気象学は、人の生活に関わるあらゆる方面に必要とされるものですが、当時は航海術への寄与や、兵器化のポテンシャルなんかが重視されたんじゃないかと推測。天文観測技術も航海術としてだもんね。
夫を亡くした女性飛行士アメリア・レン(英国貴族の末裔?)は、エンターテナーとしても一流。7000mを超え、気球の破損のリスクに恐怖しながらも、最終的には未知の世界への誘惑に抗えず。ロック様ばりの大活躍で飛行を成功させる。フェリシティ・ジョーンズ的には過去最高レベルの熱演です。いつもテンションは高い役が多いけど、今回はフィジカルでも凄かった!
「死ぬも生きるも、君と一緒だ」なんて、痺れるじゃないですか。普通、けこーん!なんかしちゃわないですか?ここまで来たら。いずれにしても、大冒険の後、エンターテナーの衣装を脱ぎ捨て地味な服装で観測飛行で気球を操舵しているレンの姿が、最高に素敵。俺も飛びたい。ただし天気のいい日にね!
良かった。とっても!
好みのジャンルだったもんでw
◆物語のモデルとなったコンビは、James Glaisher & Henry Tracey Coxwell
ジェームズ・グレーシャー(James Glaisher)は実在する気象学者。実家が時計職人であった事や、グリニッジ天文台の助手を経て気象部門の研究者となった事、雪の結晶観察の緻密なスケッチ本を出版した事、高空の大気の温度と湿度を計測するために気球による飛行を繰り返した事、1862年9月5日の飛行で、それまでの高度到達記録を破り、推定10,900mまで到達していた事。また、彼が高度8,800mを超えた所で酸素不足により気絶したこと、同乗者がバルブを開いて降下させたことは、事実であり映画の通り。
でね。問題は、この、「同乗者」なんですけど。Henry Tracey Coxwell と言う、王立海軍の提督を父に持つ「飛行士」なんです。男性です。彼もまた、低酸素症に苦しみながら、ロープを口にくわえてバルブを開いたそうです。つまりは、フェリシティ・ジョーンズ演じる、アメリア・レンの存在と超人的な活躍がフィクション部分って事になります。
尚、彼らの飛行の状況を記録したイラストを見ると、ゴンドラのサイズは映画に登場した気球の半分ほどのサイズ。コンパクトなゴンドラが、逆に冒険心をそそったりするんですよね、これが。ちなみに気球の名前は「Mammoth」。このセンスは理解できないです。空にも、天気にも関係ないし、イギリス的でも無いし。なんでなん?マジで謎。
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4/1 今更補足
Ameliaにはモデルとなった女性が実在するそうです。
イギリスの女性飛行士だった Margaret Graham と、 初の女性気球操縦士、Sophie Blanchard の2人です。Sophie Blanchard の夫、Jean-Pierre Blanchard は操縦士。Sophieは夫の死後、操縦士になったと記述があります。更に、Jean-Pierreの事故死は、1824年5月25日に起きたThomas Harris の事故死に基づくものだそうです。
女性の飛行士・気球の操縦士も実在していたよ!って事で。
> Ameliaにはモデルとなった女性が実在するそうです
なんと! またまたの事実発見ですね。ありがとうございます。おかげで、観終わってから、三度めの感動になりました!
コメント、ご快諾ありがとうございました。
> 製作陣と脚本は「ワンダー君は太陽」のチームなんですよね…
わ、そうなんですね。わっかるな〜。自分も注目しとこっと。
どこが事実で、どこが創作部分かを詳しく教えてくれて、ありがとうございました。とても勉強になりました。
自分のレビューに勝手に引用させていただきました。事後報告ですが、何か問題あれば、言ってください。
bloodtrailさん
「アンドレ=ジャック・ガルヌラン」
教えていただいてありがとうございます。
調べてみました。
この作品の時代より70年くらい前にすでに
現代のようなパラシュートがあったとは驚きです。
気球の歴史も古いのですね。
勉強になります。
また色々教えてください。
毎度どうもです!
さすが理系の方には好奇心あおられる作品だったみたいですね。
文系的にはやっぱりアクション?なんでしょうか・・・
今日もジャッキー映画を観てきましたが、気球の上でのアクションなんて彼しかやらないと思ってましたw
実話部分を詳細に書いていただき、わかりやすかったです。