「心に染み入る「虹の彼方に」が色褪せない作品です。」ジュディ 虹の彼方に マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
心に染み入る「虹の彼方に」が色褪せない作品です。
予告編を観てから興味が湧き、あの名曲「オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)」が頭の中で響き渡り、スクリーンで聴きたくなって鑑賞しました。
で、感想はと言うと、面白い。
面白いけど、ラストはちょっと好みが分かれる感じで細かい所で気になる所もあるかな。
「ボヘミアン・ラプソディー」を彷彿させる様な、ジュディの歌への愛と葛藤、そして終焉に向かう魂の燃焼を切なくも愛おしく描いています。
とにかく伝説の女優、ジュディ・ガーランドをレネー・ゼルウィガー(※正式にはレニーではなくレネーだそうです。)が情念深く熱演。
「ブリジット・ジョーンズの日記」でキュートな役を演じたレネー・ゼルウィガーがベテラン感のある晩年のジュディを演じているのにはちょっとビックリな感じがしますが、役のジュディとはほぼ同年代。あのブリジット・ジョーンズのレネーがこんな役をやるなんて、なんか思えば遠くへ来たもんだな感じでw、違和感が無いのかも知れませんが、苦労の末か、晩年のジュディがちょっと老けて見えます。
一昔前のスターって、何処か刹那に生きて、一瞬の栄光の為に全てを投げ打つ、悲壮感と輝きがありますが、ジュディは子供達との平穏な生活も夢見る。その何処か矛盾めいた葛藤を見事に演じてます。
また、一世紀近く前のアメリカのショービジネスのブラックな待遇とハラスメントで人間形成が歪んだ様に感じる程、「オズの魔法使」での子役時代がネックになり、その後も自業自得的ではあるけど、転がる様に堕ちていくジュディが切ない。
ロンドンでは大スターとして迎い入れられてますが、睡眠不足と情緒不安定でいろんなトラブルも多発。
トラウマの様に回想シーンで差し込まれる、1930年代のハリウッドの裏側とタレントへの労働管理は無茶苦茶に映ります。
ある意味、ジュディは黎明期から過渡期にあるハリウッドの犠牲になったとも言えます。
ジュディ役のレネー・ゼルウィガーが主役ではありますが、個人的にお気に入りはロンドンのマネジメントを担当するロザリン役のジェシー・バックリーとジュディの青年期を演じていたダーシー・ショウ。ジュディの娘のローナ役のベラ・ラムジー。
5度目の再婚相手のミッキー役のフィン・ウィットロック。
ロザリンは健気にジュディをバックアップする有能なマネージャーですがキュートで可愛い。
ジュディの青年期を演じたダーシー・ショウも可愛らしい。古きハリウッドのキュートさを醸し出している。
娘のローナ役のベラ・ラムジーもキュート♪
おぉ!キュートばっかりやw
ミッキー役のフィン・ウィットロックはオールドスタイルな感じの正統派な男前。
実際にジュディ・ガーランドはLGBTQ問題にも理解があった事と自身も関わっていたらしいんですが、それもあってか劇中でもそれを取り上げています。この辺りが「ボヘミアン・ラプソディー」と少し似通る感じです。
また、熱烈なファンによってジュディは助けられ、LGBTQ問題に悩むファンもジュディに助けられる。
二人の男性ファンとファンの家で卵料理を楽しそうに作る描写はほっこりして、ジュディの束の間の心の安らぎを得られて感じで良い♪
芸能の世界の憧れと非情さを描きながら、こういった描写がなんかホッとします。
個人的に気になるのはラストの件り。
アルコールで2度目の失敗を起こしたジュディがステージ出演契約を解除され、ステージの袖から覗く事でどうしても歌いたい衝動に刈られ、ジュディの代わりに出演しているロニー・ドネガンに禊を済ますかの様に1曲で良いから歌わせてと嘆願し、ロニーがそれを了承するが、自らのトラブルで出演解除になったのに突然すぎるジュディの登場に観客からは前回あれだけのブーイングが飛んだにもかかわらず、今回はブーイングが一切飛ばないのはちょっと不自然。
ステージで歌っているロニーがスペシャルゲストとしてジュディを招き入れるとかの演出があれば、まだ納得も出来るけど、ジュディが起こした失態やロニーに変更されていると言うのは観客側は知ってる筈なのに、それを当たり前の様に受け入れているのはちょっとご都合な感じに映る。
なんだかんだ言ってもファンに愛されたジュディとも言えますが、ちょっと気になります。
ジュディは1曲だけと言っていたのにちゃっかり2曲歌っているしw
ロニー・ドネガン良い奴過ぎw
興行主のマイケル・ガンボン演じるバーナードもジュディの登場を容認と度量が広い。
また、ラストで「オーバー・ザ・レインボー」で熱唱するが、ジュディは歌いきる事が出来なくなり、観客がアカペラで合唱するシーンは感動のシーンではあるんだけど、やっぱりジュディには歌いきって欲しかった。
「ボヘミアン・ラプソディー」から始まった昨今のアーティスト伝記映画の流れを組んでいるし、「ボヘミアン・ラプソディー」の完成度が高いだけにどうしても観る側は見比べる所があると思うんですよね。
「ボヘミアン・ラプソディー」と比べるのは野暮と言うのを踏まえてですが、「ボヘミアン・ラプソディー」のクライマックスのライブエイドでのフレディの魂の熱唱の感動とド迫力のライブシーンに近い物を期待するだけに、最後は観客に助けられながらもオーバー・ザ・レインボーを熱唱して歌いきって欲しかったなぁと。
そこでエンドロールに流れていけばもう最高♪
ベタと言えばベタな感じではあると思いますがちょっと期待してたラストと違っていて残念かな。
と言うのは個人的な見解ですが、如何でしょうか?
いろんなアーティスト伝記映画が今後もラインナップされていく中で、皆が知っている名曲がある時点で思い入れはひとしおになるかと思います。
ジュディ・ガーランドと言う伝説の女優でアーティストの作品に触れられた事が嬉しい。
ハンバーガーやケーキを食べさせてくれない厳しい管理の中、本当の幸せを掴んだかは定かではないけど、ステージで堂々と歌うジュディは輝いていたのは確か。
なんだかんだ書きましたが、彼女の歌う「オーバー・ザ・レインボー」が聴きたくて、鑑賞したのでそれが聴けたのは素直に嬉しい。
あの名曲がいつまでも鳴り止まないんですよね。
それだけでも鑑賞の価値はあるかと思います。
コロナウイルスの影響でいろんな作品の公開が延期になり、この作品も公開直後にも関わらず、劇場は少し寂しい入りな感じですが、感動は色褪せないかと。
いろんな事に心配な御時世ですが、良い作品なので、よろしければ如何でしょうか。
nemoちゃんさん
コメントありがとうございます。
また、賛同頂きましてありがとうございます。
あくまでも個人的な意見ではありますが、作品として良いだけにコロナの影響で閑散とした劇場はやはり寂しく思いますね。
一刻も早く劇場に気軽に足が運べる様になると良いですね。
また、お暇がありましたら、覗きに来て下さいね♪