「『サスペリア』(1977)ファンの為の作品!」サスペリア HIROKICHIさんの映画レビュー(感想・評価)
『サスペリア』(1977)ファンの為の作品!
【ネタバレとしましたが、 難解なので独自の解釈です。】
ダリオ・アルジェント監督の「サスペリア」(1977)は映画の中でも〝神〟的に好きな作品でw
それ以降アルジェント作品に「サスペリア」以上のものを求めて観てしまうのですが「サスペリア」以上の作品には出会えず! 個人的には「サスペリア」はあらゆる偶然が合いまって生まれた〝神〟的作品だったのだと諦めていたのですが (「フェノミナ」まではギリ)…
このルカ・グァダニーノ監督版『サスペリア』はその41年の欲求をすべて満たしてくれる程素晴らしい作品でした。
ただ単にリメイクするのではなく、アルジェントの強いビジュアル、色彩、音楽をあえて排除して、エッセンスだけ汲み取り独自の『サスペリア』に仕上げたグァダニーノの映画創りの魂を感じ、またそこにアルジェントへの敬意をも強く感じられました。
そして肝心なストーリーもリアリティに拘るグァダニーノらしく、アルジェントの「サスペリア」公開時の1977年ベルリンの時代背景に照らし合せ、魔女達の関係や存在意味をよりリアルに描いており、アルジェント版でのバレエ寄宿学校を、ピナ・バウシュ的な現代舞踊の養成所にシフトし、〝舞踊〟=〝儀式〟として描く解釈は説得力がありました。
ビジュアル的にはサブのエピソードを現代アート的なイメージカットをサブリミナル的に挿入し、全編を通して映画を観るというより現代アートの映像を体感している様で、血みどろの魔女の召喚儀式にトリップさせられました。
これもコンテンポラリーアートの映像作品に数多く出演しているティルダ・スウィントンの存在があるからこそ出来た作品だと思いますし、一人三役も見事 でした!!
ホラーという概念をも覆し、脳で感じる恐怖映像作品としてとても芸術的なセンスを感じました。
そしてラスト。単純にストーリーをなぞるのではなく、ちゃんとグァダニーノ作品としてのオチも用意されており、アルジェントの「サスペリア」三部作の「インフェルノ」(1980)から三人の魔女(嘆きの母、暗闇の母、涙の母)をもってきたあたりは鳥肌物でした‼︎
エンドロール、スージーがベルリンの壁を撫でる意味…
真の〝魔女〟とは? 当時のドイツの時代背景を勉強すれば2倍も3倍も楽しめる、まさに現代版『サスペリア』として見事な作品でした。
そういう意味ではホラー映画では無いので、お化け屋敷的なホラーを期待すると何じゃこれ⁉︎ ってなる作品。