「作家はフィクションでこそ嘘をつけない」メアリーの総て ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
作家はフィクションでこそ嘘をつけない
フィクションは架空の物語だが、だからこそ作家の本性が刻印されるものだとよく言われる。コラムやエッセイよりも、作家の奥深くの本性がより強くでるのはフィクションを書かせた時なのだ。ならば『フランケンシュタイン』を10代の頃に書いたメアリー・シェリーのいかなる本音がその物語には刻印されているのだろうか。本作の一番の関心はそこにある。
映画は、メアリーの家庭環境、自由本坊な詩人パーシー・シェリーと出会い、振り回され、その才能を抑圧された半生が描かれる。直接のアイデアの着想のシーンも描かれてはいるが、そこに本題はない。怪物を産み落とした彼女の心の内側があくまで主題だ。
フランケンシュタインの怪物は、自分を生んだ科学者に対して花嫁となる怪物をもう一体作ることを求める。恐ろしい怪奇小説だが、同時に愛を求める悲痛なロマン小説でもあるこの物語は、最終的には生みの親の死を嘆く怪物の姿が描かれる。父と夫に振り回された彼女の半生の苦しみと小説は、確かにリンクしている。
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