「滅私は本当に救いか?」若おかみは小学生! 🐻さんの映画レビュー(感想・評価)
滅私は本当に救いか?
いやきっっっっついわ...
途中でもう見るのやめようかと思った
確かに涙は出たけど、ただただ辛いだけだよこれ。感動では全くない
色々言いたい事がことがあるんだけど
まずアニメーションのクオリティはすっごく良くて質が高い
さりげない3DCG背景の自然な表現や、キャラの細部の所作とかエグいクオリティ
とくに最後の神楽のシーン。
派手さは無いんだけど劇場版でしか見れないレベルの動きの良さでアニメオタクとしてはたまらんデキ
あと全編を濃密な死の影が覆っていて、これがウケたんだなって事はよく分かった。
演出に関しても非常にうまい。身近な人を失った時の精神的エラーの演出がかなりリアルでちょっと怖いレベル。
両親を失った交通事故のシーンから、通常たどる筈の悲しみを消化するシーン(葬式とか)を一切経ずに、元気に引っ越しするシーンにぶっ飛ぶのとかめっちゃ怖い。実際振り返った時ってこんな感じの記憶の飛び方だと思うし、この時点で両親の死を受け止め損なってるってのがよく分かる秀逸なカット。
引っ越して直後は「私も両親を失ったから...」なんて言ってたのに、徐々に濃くなっていく両親の幻覚を受け入れ始めるのも本当にぞくっときた。人の狂い方の限りなく自然な描き方って感じ。表面的には明るく旅館で暮らせてるのが、より現実感をますんだよな。
ただ、シナリオの持つメッセージがダメ
あんまり作品のメッセージ自体に否定ってしたくないので、極力Not for meって表現を心がけてるんだけど、
この作品に関しては明確にダメだと思った
判断力のない子供に滅私を押し付けてはいけない
守るものがある責任を持った大人ならいざ知らず、ある日全てを奪われただけの被害者の子供にさぁ、
自分を殺して使命に殉じる事を美徳と感じさせるようなシナリオはちょっと違うんじゃないの??
原作が児童文学なので現役小中学性が見て感動する分には分かるよ
主人公おっこに感情移入して「強い子だなぁ」とか「幸せになってくれ」って感動するのはまぁ素直に見ればそうなるし分かるんだけど、
冷静に周囲の大人の立ち回りについて振り返るとポンコツどもしかいないんよね
子供の視点でのヒロイックなストーリーだから、大人は自我の無い脚本の奴隷になってる事を勘案してもな〜
一言で言えば「12歳の子供に何てこと言わすんじゃい」って感想しか持てなかったな
特におばあちゃんの立ち回りだけ見るとマジで鬼畜っすよ
冒頭なんで1人で引越しさせてんの??人の皮を被った鬼か?
まだ12歳の女の子っすよ
クライマックスの立ち回りもポンコツ感がエグい
シナリオ上おっこが困難に立ち向かうために脚本の犠牲になってる面は大いにあるんだけど、それにしても保護者としてちょっと頼りないな〜
まあだから、リアリティを度外視したあくまでもおっこ視点で感情移入するヒロイックなストーリーだよね
子供視点では確かに感情移入できるし、面白いんだけど、大人が感動するって言うのはちょっと違うんじゃないかな〜冷静に見てほしいな〜ってのが正直な感想っす
特にひどいのがトラックの運転手
ある意味で被害者であることは分かるんだけど結果として人を轢いてるのになんか不貞腐れてるオーラがマジでムカつくんだよな
そんないじけた性根だから若おかみとはいえ子供であるおっこに、人を轢いたことを漏らしちゃうんだろうね。しかも自分の子供がいる前で。
こいつ自分がやったこと全然受け止め切れてないんだよ
おっこより精神が子供。
挙句に旅館を移るタイミングで「おれがつらい」から移るんだとか言い出すし。口が裂けても言うんじゃねぇ。
なのでコイツは許すに足る人間か?って視点で見ると
最後のシーンが、ただただ「大人の考える美学のために自分を殺しただけ」で全然美しくない
許さない自由もある筈なのに、大人の美学でそれを曇らせるようなメッセージは最悪だよ
...と言う過程からこの映画は子供に見せたくないです
ちなみに原作の児童文学やテレビ版は見てないし、内容や切り口も少し違うみたいなのでそっちは分かんないっす
両親の死にフォーカスしてるのは映画版独自の切り口っぽいので、多分それが致命的なポイントなんじゃないかなって思う
これが一年とか掛けたアニメで、若おかみとしての生き甲斐とか矜持を見出してからの許しという結論だったらめたくそに感動したような気がするけど、90分でそれを感じさせるのは土台時間が足りないわ
要するにおっこが自分で選び取った選択だって説得力が薄いのが全ての原因かな〜って感じ