「訳あり客も幽霊も悲しみも幸せも、若おかみが温かくおもてなし」若おかみは小学生! 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
訳あり客も幽霊も悲しみも幸せも、若おかみが温かくおもてなし
原作は児童書シリーズ。
画のタッチは可愛らしい子供向け。ちょい萌え的。
てっきりTVシリーズの続きである劇場版と勘違い。
なので、当初はほとんど興味も関心も無かった。
が、じわじわ口コミで評判に。
こうなってくると、いつもながら気になり見たくなってくるミーハー心。
うん、確かにこれは、非常に良かった!
劇中さながら、“春の屋”の温泉に浸かり、心も身体も温かく満たされたような。
TVシリーズの続きではなく、劇場版として再アニメ化。
全くの“初客”でも難なく見れるのが有難い。
祖母が女将である老舗温泉旅館“春の屋”で、ひょんな事から若女将修行をする事になった小学6年生のおっこ。
当初は虫やヤモリを見ただけで悲鳴を上げる現代都会っ子。
おっちょこちょいで、ドジ。
旅館の仕事って、大変!
祖母や従業員に迷惑掛けてばかりだが、支えられ、奮闘・成長していく。
まるで朝ドラか昼ドラみたいだが、本当にその姿やこの作風が心地よい。
まだ子供で修行中だが、仮にも春の屋の従業員。
お客様が見えたら、誠心誠意おもてなし。
でも何故か、春の屋にいらっしゃるお客様は、風変わりで訳あり。
作家とその病弱の息子。
怪しそうな女占い師。
春の屋のモットーは、どんなお客様も拒みはしない。
健気で素直なおっこが、お客様の心を開き、交流を深める。
作家の息子は、おっこと同じ傷心が…。塞ぎ込む彼の為に、口に合う料理を作る。
美人で洗練された占い師のグローリー。気晴らしに付き合い、良き理解者、歳の離れた友達となる。
若女将が有名となり、春の屋は商売繁盛。
おっこは、若女将に普通の小学生に大忙し。
同級生に、いつも“ピンふり”(ピンクのふりふり衣装)ながら、豪華温泉旅館の一人娘・真月が居て、高飛車なお嬢様性格からか、おっことはバチバチ火花散らすライバルに。
春の屋にいらっしゃるのは、何も“人間”だけじゃない。
春の屋は、出るんです…。
おっこが春の屋に来て、最初に出会ったのが、幽霊少年のウリ坊。
明るく、フレンドリー。
実はこのウリ坊、おっこの祖母とある関係が…。
幽霊はもう一人。女の子幽霊の美陽。
彼女はおっこのライバルの真月と関係が。
さらにさらに、幽霊の他に、魔物も! 小鬼の鈴木…いや、鈴鬼。
時々春の屋の食べ物が無くなったり、訳あり客がやってくるのは、この小鬼のせい。
幽霊に魔物と、春の屋ってひょっとして、曰く付きで呪われてる…?
いえいえ、ウリ坊も美陽も鈴鬼もユーモラスで、おっこの成長も彼らとの交流や支えがあったからこそ。
言わば、守護天使。
でも、いつまでも見護られてる訳ではない。
おっこたちが悩みや悲しみを乗り越え、一歩踏み出し、成長したら…。
実はおっこは、深い悲しみを抱えている。
祖母の元に引き取られたのも、交通事故で両親を亡くしたから。
時折、両親と過ごした日々を思い出す。
また、ふとした場面で、トラウマに陥り、動揺を隠せない事も。
春の屋に、とある一家が宿泊に来る。
父親は長らく入院してたようで、久々の家族旅行。
食事制限のある父親の為に、おっこは真月に相談したりと、一肌脱ぐ。
ところが、おっことこの家族には、衝撃の事実が…!
普通だったら、絶対会いたくない相手。
何故なら…。
でもおっこは、受け入れる。
春の屋のモットー、どんなお客様も拒まない。
それはおっこ自身でもある。
自分自身の悲しみも幸せも、お客様たちの悲しみも幸せも、全て受け入れる。
まだまだ修行中だけど、私はお客様の心も身体もおもてなしする、春の屋の若女将!
温もりたっぷりの画のタッチも作風も高坂希太郎の演出も、情感に満ち溢れている。
ファンタスティックでコミカルであるが、しみじみと良質の人間ドラマでもある。
映画オリジナルの冒頭とラストのお神楽が印象的。
劇中度々登場する春の屋オリジナルの料理やデザートの数々が本当に美味しそう!
たまには、ゆったり温泉に浸かって、こういう老舗旅館に泊まってゆっくりしたい。
って言うか寧ろ、この春の屋に行きたい!
ほんのひと時でも、春の屋に泊まって、おっこらの温かいおもてなし気分に浸らせてくれる。