「終わりと始まりの境界線」旅のおわり世界のはじまり マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
終わりと始まりの境界線
キャストがなかなかな布陣な事とタイトル、ストーリーに牽かれて鑑賞しました。
で、感想はと言うと、いろんな部分で惜しいなぁ~と。
大まかには悪くないし、いろんな好きな部分も沢山あります。
山羊のオクとの出会い→別れ→出会いなんて、ロードムービーの最たる表現かと思いますし。
それでもいろんな事が足りなかったり、展開のタイミングが遅かったりと気になる部分がちらほら。
歌手志望のテレビレポーターの女の子がウズベキスタンの怪魚を探す番組のリポートをするが、怪魚が見つからないどころか現地での様々なトラブルの中、いろんな事が起こる事で自身の夢と現実に向き合っていくと言うのが大まかなあらすじ。
「世界ウルルン滞在記」や「世界ふしぎ発見」と言った世界紀行ドキュメンタリー番組の取材撮影の裏側を通じて、ウズベキスタンと言う若干馴染みの薄い見慣れない風景にはいろんなワクワク感も不安もあるし、遠い外国の地の出来事には何かに思いを馳せるにはピッタリ。
多分、普段目にしている番組で放送された以外の現地の裏側にはこういった問題が多々あるんだろうなぁと思うけど、やっぱり気になる所があるんですよね。
気になるのは以下の点。
●葉子の葛藤が遅いし薄い!
前田敦子さん演じる葉子がテレビリポーターの仕事をちゃんとこなしてはいるんだけど、常に表情に憂いがあると言うか、疲れた様な感じなのが、彼女の本音が見えづらい。
与えられた仕事を一生懸命こなしてはいるけど、何処か不満がある様に見受けられます。
取材が終わってからスタッフと食事をパスして、1人街に繰り出すのは観光をしたい訳でもなく、外食をしたい訳でもなく、ただ1人になりたいだけ。
街で怖い思いをして、レストランで食事もせずに買い出しをして、ホテルの部屋で食事をする。
この辺りの件も葉子の心境の揺れと葛藤ではありますが、だからこそそれを描き出す描写が薄い。
前半は彼女のプロモーションみたいな映像が多いし、着替えのシーンは何かサービスカットみたいにも見えますw
中盤の導かれる様に入った劇場の件から、彼女のやりたい事が明確になってはきますけど、やっぱり遅いなぁと。
慣れない外国の地でテレビリポーターの仕事を一生懸命こなしながら、様々なトラブルにはいろんな苦労があるのは明白ではありますけど、葉子が何故か自分の気持ちを押し殺している様な仕草や表情は“何かあるんかいな?”と無駄に勘繰ってしまいます。
前田敦子スマイルではありますが、この表情に牽かれるかどうかで感想は変わるのではないでしょうか。
●番組クルーの話が少ない。
加瀬亮、染谷将太、柄本時生と言った実力派の若手俳優を要しての番組クルーなのに出番少ないし、勿体無い。
いろんなトラブルを通じる事でドラマは産まれるし、リポーターの葉子にもいろんな思いがあるけど、その部分も少ない。
膨らませ過ぎてコメディにする必要はないけど、勿体無いなぁ。
前田敦子スマイルが全体に作品の色を染めているのはそれだけ、前田敦子さんが実力を身に付けてきた女優さんになってきたと思います。
ですが、全体的な会話が少なくて、表情で損している部分がやっぱりあります。
ウズベキスタンの警察に事情聴取されている中で現地の弁護士に“話をしないと互いに何も知り合えない”的な台詞はこの作品に当てている様にも思える事で、もっと葉子の思いの丈や番組クルーとのディスカッションがあった方が良かったのではないかと。
結局大人の気持ちで仕事を淡々とこなしているだけに思えます。幻の怪魚も見つかってないしw
様々な事が観る側の気持ちで補填すると言うのも分かるけど、そこを観る側に任せるのではなく、きちんと表現して欲しいかな。
「地球の歩き方」で世界が分かる訳ではないけど、やはりガイドブックを片手に体感する事は大事な事。
だからこそ、作品のタイトルに相応しい内容とラストに至るまでの伏線と流れは大事でなので、…やっぱり惜しいなぁ。
結構期待してた分だけ、ちょっとガッカリではあります。