「難しいから面白い」騙し絵の牙 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
難しいから面白い
超絶エンターテイメントだった。
出版社の物語ではあるものの、打ち出されるメッセージが小気味いい。
実際のトコ本作は、その「難しい」には当てはまらないのかもしれない程、豪華な俳優陣。が、しかし、この脚本にこのキャスティング…走り出すまでが難しかったのではなかろうかと想像する。
失礼な言い方だと思うのだが、小林聡美さんを引っ張りだしただけでも俺的には大金星だ。そしてのっけから持ち味全快だ。ニュース番組で腕時計を気にする素振りいるか?曲者っぷりも甚だしい。俺は小林さんのあの仕草で、作品への期待感を膨らませたのだと思う。
「演出の仕事はキャスティングで8割終わる」と聞いた事がある。この作品はそれを体現したかのような仕上がりで、皆様、見事な泳ぎっぷりだった。
その水槽を用意した監督の手腕も相当だと思う。
驚くような仕掛けがふんだんに用意されていて、皆様それを楽しんでいるようにも感じる。
大泉氏と松岡さんに寄るところは多いのだけれど、役者陣は粒だっていて抜かりがなかった。
また、音楽がNICEなタイミングで入る。
エンドロールで音楽のコールを探したのは初めてだ。「LITE」って表記されてた。
実に心地よく嫌味なく煽ってくれる。
昨今の風潮として「ローリスク・ハイリターン」みたいな声も聞き、それ自体は間違いではないとは思うのだけど、全てにおいて優先されるべきではないと思うし、世の中がインスタント化してきたなと感じる時も多々ある。そんな中の「難しいから面白い」
胸がすく想いだ。
一握りの才能ある人間の特権だと目を背けるだろうか?いやいや、そんな事はない。程度の差はあれ「難題」は思考を伴い成長を促してくれる。そして経験という武器を与えてくれる。
どうせ克服せねばならない壁ならば、自らの意思とともにぶつかっていきたいと思う。
安心や保証は確かに大切だ。だが、それを得る為の開拓にこそ目を向けなければ人も組織も腐っていってしまうのかもしれない。
そしてその変革にも旬があると、KIBAプロジェクトは語る。時流は留まりはしないのだ。
最後のドンデンに向けて、丁寧に練られた伏線も素晴らしい。それが可能かどうかは置いといても、やりそうなキャラ達であったのは間違いない。
今の今まで指揮者だった速水の苦渋。
描いていた図面をバッサリ破られた悔しさは相当だと思う。だけど監督はその内面を明かしはしない。
相手を恨むのでも、自分を卑下するのでもない。
いわゆる句読点なのだ。
その章が終わっただけだ。
その世界に居続けるのならば、同じような事は起こるし、逆の立場にだってなりうる。
コーヒー投げつけて終わりでいいのだ。
ゲームセットはまだだし、雌雄も決してはいないのだ。
実は、時間に余裕があったのでもう一本観るつもりだった。なのだけど、俺はすこぶる満足で、お腹いっぱいだった。この作品の余韻を楽しみたくて、もう一本観るのはやめた。
こんな気分になったのは初めてだ。
まだかなり早いけれど、今年度の俺的アカデミー最優秀作品賞なのである。
充実した幸せな時間だった。
U-3153さん
コメントへの返信有難うございます。
U-3153さんのレビューから、ワクワクが伝わってきました。これ程ワクワクさせて貰える作品を映画館で楽しめる至福、たまりませんよね。
U-3153さん
主演の大泉洋さんを始め、配役が見事でしたね✨
まるで面白い小説を読んでいるように、ぐいぐいとラスト迄引き込まれました。
キャストの皆さん全ての演技に魅せられた作品でもありました✨