「舞台芸術ファンにもぜひ見てほしい」氷上の王、ジョン・カリー すずさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台芸術ファンにもぜひ見てほしい
「男が優雅に滑ることが許されない」時代に、これほどバレエのポジションやムーブメントとスケーティング技術を見事に融合させた五輪金メダリストのいたことにまず驚く。
プロ転向後は「総合芸術としてのフィギュアスケート」を追求するために自らのカンパニーを立ち上げ、錚々たる振付家と創りあげた数々の作品が、今見ても何ら古びることなく観る者をひきこむことにさらに驚く。
中でもバレエのニジンスキー振付であまりにも有名な『牧神の午後』をノーマン・マアンが振付けた作品は、全体的にぼんやりした映像がまるで夢の中のよう、ほぼ裸にも見える衣裳の男女が追いつ追われつ、ついては離れ、美しいポーズで身体を重ね絡ませて滑っていくさまが衝撃的にエロティックでいながら静謐で純粋無垢なエネルギーに満ちていて、芸術以外の何ものでもない。
フィギュアファンはもちろん、フィギュアはテレビの試合しか見たことのない舞台芸術ファンにもぜひ見てほしい。この映画の字幕監修・学術協力を担当した町田樹氏が言うように、フィギュアスケートは舞踊の1ジャンルになりえるときっと納得してもらえると思う。
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