「「悪魔により支配を」」私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「悪魔により支配を」
自分にとって、一番ストレス無く鑑賞できる世界観の作品である。ま、ハッキリ言って官能小説、又はエロ漫画の実写版といったところ。原作は未読だが、もっと小説では細かい心理描写まで描いているのかも知れない。城定ワールドが本作でも全体を支配している。それは、必要以下に抑揚を抑えた、淡泊さを醸し出す。それは主演の男優の演技も然りであり、自分としてはもっとドラマティックな熱気を表現して欲しいと感じるのだが、監督ならではの演出なのであろう。
作品そのものは、所謂『SMあるある』話のパッチワークの構成である。たまたま、被虐性でその性格をリビドーに直結できる女性を勘で探し当てるのが特技の男が、パーティで知り合った女に悪戯を仕掛けるのだが、それを見破った女の夫が、奇妙な取引を持ちかける。慰謝料の代わりに、妻を調教して欲しいと・・・。
ま、丸々男にとってのご都合主義ストーリー設定で、その先もパターンである、結局どっちが隷属なのかわからなくなるという、女の底知れぬ欲望と男の物理的機能の差違、そして結局、女特有の機能、種を宿すというオチで、その一瞬の火遊びは沈静化するというラストである。只、今作品、続きがあり、その予感を印象付けるように、子供を産んだ女の不適な笑みをスクリーンに映し出す。その子供はもしかして托卵なのか・・・ そんな謎とフィアンセの子を孕んで、次回へ進むという流れである。
乳首を強く摘んでスイッチを入れるとか、一々口答えする女達がしかし実は性欲に対して感心が高いことであるとか、このところは当の女性の本音を訊いてみたいところであるが、多分訊いたところで決して本音は語らぬだろう。
プレイ内容も、実にあるある話を忠実に再現していて、大変興味深い。主演の男の戸惑いが妙にリアリティを帯びていて、追体験しているかのように観ている自分がいる。カラオケボックスでの歌を歌いながらのスパンキング等、俯瞰で観ていれば滑稽この上ないことでも、当の本人達はその世界に酔いしれていることだろう。プレイなどそれ程バリエーションはない。所謂『羞恥』プレイは、結局の所、身の安全とタブーとの鬩ぎ合いであり、バランスでもある。『What to do next』を夫に突きつけられれば、元々引出しなどない、哲学を持ち併せていない男が崩れるのは自明である。色々とツッコミどころも満載なのだが、多分、それは次作への布石、伏線であろう。さて、監督はキチンと回収するのか、それとも、風呂敷を拡げたままで、アナザーワールドへ連れて行くのか、乞うご期待である。ちなみに奴隷に意見を求めた時点で、マスター失格なのは実社会でも通づるわな。小ネタ演出の『だいしゅきホールド』を演技させているのは、相当細かい所までリサーチしているなと唸ったのは内緒である。
PS:『僕が守る』という言葉は、本当に女性にとって魔法の呪文なのであろうか?・・・