「歌の映画ではなく、キリスト教映画」アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
歌の映画ではなく、キリスト教映画
キリスト教映画、宗教映画でした。
タイトルになっている歌のファンには、素晴らしい出来かと。
父と子が長年の確執を乗り越え、相手を赦すことができたときにはじめて書けた歌である、という全体の流れは、いろいろな映画で見聞きした範囲しかキリスト教のことを知らない私でも、心動かされるところはあったくらいですから。
なにより説得力のある、歌そのものが感動を与えてくれました。
(昔の)エイミー・グラントが本物ではなかったけど、雰囲気は似せてきていて、クオリティは高い。
歌のシーンが多いので、スピーカーの設備がいい劇場で観ることをお勧めします。
ただ…
せっかくの余韻が台無しになったのは、エンディングテロップあたりで2017年2月「全米祈祷朝食会」での、バートのスピーチが映ったシーン。
これってトランプが就任後初のタイミングで、「教会を政治から締め出す法律を完全に撤廃する」と発言し、政教分離を真っ先にぶっ壊した時のこと。
分断を煽り、白人至上主義・アメリカ至上主義を訴え、カルトなキリスト教福音派の信者が「何が赦すだよ」と。
「まず福音派以外の人間を赦してから、いろいろ語ってくれ」という気分になったりして。
冒頭、10歳前後の子供だったバートが、教会のキャンプに行ったシーンでどの会派か気づくべきだった。
それから、バンドをやってる時に父が癌で亡くなって曲を書いたように描かれていたが、実際はバンドを始める前、18の高校時代に父親は亡くなっている。
『ボヘミアンラプソディ』はじめ、ミュージシャンの伝記映画は史実通りに描かず神格化(というかキャラ化)し、捻じ曲げてでも盛り上げ重視する傾向があるのは承知しているとはいえ、いろいろ盛りすぎ演出しすぎでげっぷが出ました。
さらにエンディングの日本語カバー曲が上手くていい歌ではあるものの、元歌からテーマがずれすぎて、なんじゃこりゃ?と椅子からずり落ちたりもし。