「アイデア凝らし、ウザさ嫌がらせ飾り付け、感動と愛情特盛りの一品!」今日も嫌がらせ弁当 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アイデア凝らし、ウザさ嫌がらせ飾り付け、感動と愛情特盛りの一品!
お母さんの事、だぁ~い好きっ!
…なんて言ってたのも、昔。
夫が事故死してから、働きながら、女手一つで二人の娘を育てるかおり。
長女・若葉は家を出、今は次女・双葉と二人暮らし。
高校生になったその次女が…、只今反抗期真っ只中。
話はしない、話もしない、無視してばかり。何か用がある時はスマホで。
そんな態度を取り続ける娘へ、母親もやられたらやり返す!
その方法は…
娘が嫌がるようなキャラ弁を毎日作り続ける!
ブログから書籍化もされたエッセイを基に映画化。
キャラ弁を通じて描かれる、風変わりで温かい感動の母と娘の物語。
ユニークで趣向を凝らしたキャラ弁の数々!
最初は可愛らしいデザインだったのが、貞子デザインや永谷園のお茶漬けデザインや一発屋芸人デザイン。
果ては、「お皿片付けろ!」のメッセージキャラ弁。
アイデアやバリエーション豊か。
時々ネタに困ったりもするが、これを毎日毎日。
頭下がるが、同時にウザさも飾り付け!
快活な母かおりは、篠原涼子のイメージにぴったり。シリアスな役もいいが、やはりこういう役こそハマる。
これに対し、娘役も巧くてはならない。芳根京子が年頃の娘のイライラや複雑な心情を、ナチュラルにキュートに好演。ますますファンになっちゃう!
母親似の快活な性格で、松井玲奈も長女を好助演。
序盤は母親の頭に鬼角が生えたり、漫画チックな笑い。
笑わせる所はベタに笑わせ、泣かせる所はベタに笑わせ、所々演技も演出も描写も大袈裟。
監督はTVドラマで『特命係長・只野仁』や『時効警察』を手掛けた人。ああ、何となく…。
この手の作品定番の、終盤母親が…という展開。
佐藤隆太演じるシングルファーザーとの関係を賑わせるエピソードは少々蛇足。
おそらく、大胆脚色もされている。
でもコミカルに、温かい感動とハートフルに、例えベタであってもこういう作品は心地よくて好き。
舞台の八丈島の雰囲気も温かい。
よく母と娘は姉妹や親友のように仲がいいと言うが、無論全ての母娘がそうとは限らない。
男には分からぬ母と娘の複雑な関係。
母と娘だから、同じ女同士だから、言いたくても言えない事、伝えたくとも伝えられない事…。
そんな歯痒さの解消が、キャラ弁となる。
ウザくて、「何これ!?」と思っていたキャラ弁に対し、「何なの、これ!?」と詰め寄りながらも、久々の会話。
双葉はとある人へメッセージキャラ弁を作る為、母に教えて貰う。このシーン、ジ~ンと来たなぁ…。
そして、母親が込めたメッセージ…。
後悔なんてない。
これは、母かおり自身にも言える。
後悔なんてない…と言っておきながら、かおりは後悔の連続。
まだ娘たちが幼い頃、養う為とは言え、働き詰めでいつも一緒に居てあげらる時間が無かった。
母親としての自分は正しかったのか…?
それでも、娘たちの枕元に置いた手紙、そしてオムライス…。
正しかったかどうかは分からないが、常に真っ正面から全力で向かい合ってきた事に間違いはない。後悔はない。
高校生になってからクールにキャラ変したつもりの双葉だが、払拭し切れぬ幼さや未熟さ。
迷走中(?)のような心情のポエムを書いたり、淡い片想いが儚く…。
自分に自信無く、将来の夢も漠然と。一応就活するが、結果は…。
でも、やがて見付けた自分のやりたい事。
食べ物も、食べる事も大好きなので、食品関係の仕事に就きたい。
そのきっかけは、言うまでもない。
毎日毎日母親が作ってくれた、ウザさと嫌がらせたっぷりの手作り弁当。
嫌なら食べなきゃいいのに、いつも必ず完食。
食べなきゃ鬼(=母)に負けた気がするとは言っているものの、本作は母親が作ってくれた嫌がらせ弁当が大好きで食べたいんだよね。
意地張ったり、素直になれなかったり、思い返せば後悔ばかり。
でも、本当は…。
それを繋げてくれた嫌がらせ弁当。
嫌がらせ弁当が本当に美味しそう!
食べるのが勿体無いくらい。
私も高校の時、今は亡き母親が弁当作ってくれたが、それをぼんやり思い出した。
例え質素であっても、有り難みと勝るものナシ!
ウザさ飾り付け、アイデア凝らし、メッセージと感動と愛情特盛り。
お弁当も、作品も!