「幼児期から青年期まで演じ続けた主人公だからこそ、見守る側にもある種の感慨がこみあげる。」ネッド・ライフル ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
幼児期から青年期まで演じ続けた主人公だからこそ、見守る側にもある種の感慨がこみあげる。
「ヘンリー・フール」三部作の最終章にあたる本作は、第1作目で幼い息子役だったリアム・エイケンがすっかり青年と化した姿で登場する。すべての発端は「告白」、そして父ヘンリー。彼のせいで家庭はめちゃくちゃになった。18歳になったネッドは今、父を探し出して復讐を果たそうとする。それは同時に、自分の中にある父の要素と決別し運命の呪いから逃れる行為でもあるかのよう。その意味で父を越えようとする、一人の青年の通過儀礼と捉えることも可能だ。ともかく、おとなしそうなのに瞳の中に強い意思を秘めたエイケンの表情が胸に焼きつく。そして今回初登場となるオーブリー・プラザの強烈な個性にも圧倒され、彼女が託された思いがけない役柄の真相に「ああ、そうか!」と納得。小規模な映画ではあるが、そこに確固たる世界観を築き、ジワリと惹きつける謎を忍ばせ、かつ芸術のありかたにも一つの示唆を与えてくれる、奇才ハートリーならではの一作。
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