劇場公開日 2018年11月16日

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「僕はブタじゃない!僕はブタじゃない!」母さんがどんなに僕を嫌いでも 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5僕はブタじゃない!僕はブタじゃない!

2018年12月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原作漫画は既読。

幼いころからずっと母親から冷たい仕打ちを受け続け、そんな母をずっと嫌いだったタイジ。虐待されっぱなしだった彼は、グレるほどの気骨もなく、卑屈でいじけっ放しの人生だった。
そんな彼にできた友達は、これまた絵に描いたような好青年たちだ。

さあ、それを観た皆さん、都合がいいとかたまたまの幸運とか思っていませんか?

ぜんぜんそんなことないですよ。よく見てあげて、タイジという人間を。心の声で毒は吐くけれども、とても心根が優しいじゃないですか。友達が寄ってきたのも、初めはタイジ自身が演劇に顔を出して自分を表現したからじゃないですか。大検受けて優良企業に努力で就職してるじゃないですか。人生の負け組側にいることにめげず、自分の道を開こうとした結果じゃないですか。
けして運命に流されるわけじゃないし、受け身なんかじゃない。だから、彼らのような好い奴らが寄って来たんじゃないですか。それでも時にへこたれようとするタイジに、ありがたいことに彼らは寄り添ってくれる。キミツの言う「理解は気付いた方からすべし。ていうか、理解する力のある方が先に気付いてあげるんだよ」なんて、とても勇気をくれる言葉じゃないか。
そしてばあちゃんが「タイちゃん、僕はブタじゃない!って言って。大きな声で言って。」と、目を覚まさせてくれるんじゃないか。
大将だって「親に変ってほしいなら、まず自分が変わろうよ」て背中を押してくれるんじゃないか。

キャストは、キミツ役のウィンのはまりっぷりが抜群。チャラさも、ハイテンションぶりも、時たま見せる憂いも。彼はこの先、伸びるだろう。
そもそも目当ては太賀で、当然うまいんだけど、彼の容姿にブタであった形跡が見えない時点で、「ブタじゃない」と叫んでもちょっと違和感があった。加藤諒あたりがベストキャスティングのような気がした。
吉田羊としては、やや貧乏くじか。演技の上手下手の前に、この役に共感がわいてこない。むしろバリバリのヒールになってくれた方が清々しいのだが、脆さやみすぼらしさを見せる役のせいで残念ながら嫌悪感を覚えてしまう。でも、この人の生い立ちを追えば、結局、虐待の連鎖から抜けられない人の弱さが見えてくるから、気の毒ではある。

栗太郎