「騙されたと思って、いや、騙してでも人に勧めたい‼️」シシリアン・ゴースト・ストーリー 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
騙されたと思って、いや、騙してでも人に勧めたい‼️
『カメラを止めるな』は映画愛、斬新さ、勇気、ユーモアなど色々な要素で語ることが出来ると思いますが、私にとって一番印象的だったことは、映画ってこんなことも出来るんだ、という驚きでした。この作品もひとことで言えば、そういうことです。
何の予備知識も持たないまま、じっくりと鑑賞し、最後の一文(モチーフとなった事件の被害者への追悼の献辞)で初めて、「13歳で誘拐され、800日近くも監禁された末に、酸で溶かされた少年」の存在を知り、この作品がその鎮魂のために作られたことを知りました。
恋愛のロマンスや事件の顛末、周囲の大人たちの告発、といったテーマ性を誤って求めてしまうと退屈な映画に感じられると思います。
しかし、誘拐された13歳の自意識や判断力(それはつまり、自分の置かれた状況の過酷さや絶望も容赦なく理解できてしまうということでもある)を備えた少年の800日に思いを馳せた時、映像の意味合いが180度反転するのです。
一縷の希望から想起される助かった時の姿、思いを寄せる人との再会、昼も夜も分からなくなるような環境の中で薄れゆく意識が魂となって浮遊していく様。水底をたゆたい、いつか見たはずの場所で恋人と再会する魂は、絶望の果てに見た幻想、しかし、本人にとっては現実。
科学的な見地での魂の存在を問うのではなく、そういう物語を紡ぎ出すことでしか、故人を悼むことはできないし、残された側の人間も、たとえ罪悪感から解放されることはなくても、救いになることはある。
個人的には、シェイプ・オブ・ウォーター以上に水の揺らめきが、魂の浮遊感や繋がりという視覚的効果としての映像化に成功していると思われるほど、深く心に沁み入ってくる哀しくも美しい作品でした。
余談ですが、少年のリュックの中に悟空のフィギュアがあり、少女が彼の無事を祈る痛切な心情の象徴として使われていたのも、とても印象的でした。
今公開中のドラゴンボール ブロリーのポスターと同じブルーの髪でしたが、どの変身形態なのかは不勉強で分かりません(≧∀≦)