「未来のミキ」コーヒーが冷めないうちに kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
未来のミキ
喫茶店“フニクリフニクラ”にあるレトロなレジスターやコーヒーチケットの壁掛けなど、昭和の香りがプンプンする雰囲気が良かった。こんなレジスターじゃ来年8%から10%に上がる消費税に対応できるのかどうか突っ込みたくなるのを我慢していたら、エンドロールのおまけ映像に新しいレジがちゃんと映ってた。そして未来の未来(みき)ちゃんはどうやって過去にやってきたのかという頭が痛くなるほどの疑問にも答えてくれていた。
客が望んだ時間に戻ることが出来るという都市伝説。そんな秘密めいた伝説であっても、働いている時田数(有村架純)やマスターの時田流(深水元基)はあっけらかんと本当だと言う。拍子抜けするのも束の間、現実は変わらないとか、過去に戻ってもコーヒーが冷めないうちに飲み干さなければならないとか、喫茶店を訪れたことのない人には会うことができないなどのルールを教えられる。タイムスリップを扱った作品では必ず訪れるタイムパラドクスをこうしたルールを作って回避しようとしているところが潔い。さらに、飲み干さなければ戻ってこれなくなって幽霊になってしまうなどといった恐ろしさも加わるが・・・
ファンタジー作品なのだから細かいツッコミは置いといて、タイムスリップできる席にいつもいる幽霊(石田ゆり子)の存在や時間を操ることのできる時田家の女を徐々に明かされる展開にはわくわくさせられた。過去を変えようとしても現実は変わらないが、人の心は変えられる。未来を変えることはできるのだという、前向きな発想も心地よい。
ストーリーは4つのエピソードを見事につなぎ合わせたもの。波留と林遣都の恋愛、薬師丸ひろ子と松重豊による若年性アルツハイマーの問題、吉田羊の姉妹による旅館跡継ぎの話、そして有村架純と母親の物語。特に良かったのはアルツハイマーのエピソードだったけど、患者と看護師の関係を夫婦の問題として前向きにとらえるところが素晴らしい。ただ、5年、10年先には理想だけでは解決できない苦労が待っているハズ・・・
ストーリーがさらに進むと、もう一つのルールが待っていた。時田家の女性にしか時間を操ることが出来ないのだが、自分でコーヒーを淹れても過去に戻ることは出来ず、他の時田家の女性に淹れてもらうしかないというものだ。つまり、今いる時田の女は数だけなので、母親に会いに過去に戻ることはできないというのだ。数に恋人ができて妊娠したおかげで、それが娘であれば・・・というクライマックスに繋がる面白さはエンドロールを見なければわからない。