「“義を見てせざるは勇無きなり”」PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3「恩讐の彼方に__」 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
“義を見てせざるは勇無きなり”
このシリーズも随分息が長くなり、寿命を延ばそうと頑張っていることは凄い事だと思う。只、何となく感じる既視感は同じプロダクションIGだからなのか、もしかして昨今のマーベル由来のマルチバースを狙っているんじゃないかと勘ぐってしまったりするのは穿った観方だと諫めて欲しいものだ。
本来の主人公である元執行官が日本を離れアジアで流浪することで自分の存在意義を見つめ直すストーリーである。内容自体は奇を衒わない骨組みであるが、敵方がマッチポンプ型のゲリラ兼自警団というスタイルを持ち込んだことは突拍子もないそして薄っぺらさも相俟っていただけなかった。背景の描きも表面を撫でているだけで必然性が感じず、ここに感情移入しろというのがかなりの困難である。結局、主人公は日本に帰る理由として、ヒロインと接する内に心が浄化されていったということであり、最大のライバルの影を心の中で飼い殺しながら次のステージに進むということなのだろう。話しがストレートな分、その葛藤や背景の複雑さをもっと緻密に塗して欲しかったのだが、いかんせんこれでは深みのグラデーションが観られず凡庸と化してしまった。唐突にでてくる外務省の女の正体等もここでは語られず、ヒントらしきもの(潜在犯の心理医師の弟子)は提示されたが、それこそおっぱいの乳首をリアルに描かない中途半端さと同様に印象がぼやけてしまっている。大人のアニメにしたいのか、それともテレビ局が作るが故の全方位を狙っての制作なのか、ターゲットがぐらついているように思えるのは自分だけだろうか。なんだか作画でも主人公の頭部が歪んでいるように見えたりと少々ネガティヴな発言に始終してしまっているが、前回の2作品を含めて、群像劇として一本にした方が相互作用で良かったのではと思えてしまう。ま、多分3つに分けて興行収入も3倍にしたかったというケチ臭さの漂う3作品であった。