劇場公開日 2019年5月24日

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「和製戦場娯楽アクションとしては、及第点では?」空母いぶき kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5和製戦場娯楽アクションとしては、及第点では?

2019年6月4日
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鑑賞方法:映画館

あまり観る気はなかったんだけれど、このサイトのレビューがあまりにも酷いので、どんなものかと思って観賞。
ファーストデーだし、みんなゴジラに集まってるし。
基本的に日本の戦争アクション映画はあまり観ない自分です。
日本は戦争加害国だから、安易に作っちゃいけないと思ってるので。

で、そんなに酷くはなかった印象。

戦闘シーンはそれなりに緊迫感があった。
CGに物足りないところはあったが。
自衛官たちも内閣も戦争回避に最大限の努力をしたのが伝わるし、敵の人命をも重視しなければならないのが、だから戦いづらいという主張ではなく、人道上の配慮として描かれていたように思う。
右寄りな印象は薄かった。

アメリカ映画も含めて、軍人を美化する物語は敵が絶対悪、戦闘が絶対正義でなければならない。
だから、エイリアンと戦うような超フィクションで軍人をかっこよく描く。
邦画では「図書館戦争」が少し違うかもしれないが傑作の例ではないだろうか。
本作は、国連が認めていない架空の新興国家が敵の設定。
占領される島が尖閣諸島の連想を拭いきれないので、超フィクションとまではいかないが、肩肘張らずに観られた。

さて、原作ファンから一斉に非難を浴びているストーリーの“改悪”だが、実写映画でストレートに中国を敵国にできるはずもなく、2時間の物語で決着を見せなければならないのだから、大幅な脚色は必定。
しかし、今回はそれが原作のコアなファンの反感を買ってしまったようだ。
こんなことを言っては元も子もないが、この漫画を映画化することに無理があったんじゃないか。
ただ、原作者のかわぐちかいじ氏は“監修”としてクレジットされているし、氏のコメントでは満足されている様子。
パブリシティであることを割引いても、本作を否定はされないだろう。

イデオロギーをテーマに持ってこなかった ことで、害のない娯楽映画になっている。
あ、それがコアなファンにとっては害なのか…
かわぐちかいじ愛が強くて、この映画を強く批判しているファンの思想って、果たしてかわぐち氏のそれと一致しているのだろうか?
本作の製作陣と原作コアファンとは、原作のテーマの解釈において大きな解離があることは確か。

「いぶき」に乗船している二人の記者は、悪いアイディアだとは思わない。
民間人を乗せたまま行くか?とは思ったが。
本田翼で色を添えるのはありでしょう。(なにしろ可愛いのだから!)

コンビニの場面不要論には同意。
オヤジ文字のクリスマスカードもいらないアイテムだった。
書かれたメッセージも陳腐だし。

そして、事件後の感傷的な場面も冗長だと感じた。

酷評の論点のもう一つに、佐藤浩市のインタビューがあった。
佐藤浩市を批判している著名人は、役者のなんたるかを語れる人たちなんでしたっけ?
役者の意見に左右された監督のことも非難したりしているが、映画製作は大勢の人や利害が関係するプロジェクトだ。
ディスカッションすることは当たり前。
佐藤浩市が語った(しかも、極めてサラリと)は、“役作り”についてだ。
多くの役者が自分なりに人物像を想定し、監督の意向を確認して演技コンセプトを組み立てる。
よく聞く話。
佐藤浩市の一大局面にたたされた総理は、良かったと思う。

むしろ気になったのは、西島秀俊のニヤついてるのか何なのか分かり辛い表情。
ま、真意が掴みにくいキャラクターで、最後の佐々木蔵之介との会話で心境変化が垣間見える…という演出なのかもしれないが。

若松節郎監督はテレビディレクター出身で、最近でもWOWOWのドラマなどで硬派な仕事をしている。
ただ、映画においてはあと一歩で詰めの甘さが目立つ印象。
本作も残念感はあったので、「頑張ったで賞」的な作品と評価する。

kazz