家(うち)へ帰ろうのレビュー・感想・評価
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忘れられない苦しみと向き合う
ホロコーストを題材にした部分がありながら、その部分の描写は簡潔に済まされる。でも所々に主人公の頑固さとともにずっと背負ってきたトラウマと戦っていることが感じられた。
第二次世界大戦を実際に体験した人がどんどん減っている中で、その辛さとどんな風に向き合ってきたかがリアルに感じ取れる映画。
二本立て一本目、今日の伏兵。 冒頭のしたたかな少女が面白い。怒りつ...
二本立て一本目、今日の伏兵。
冒頭のしたたかな少女が面白い。怒りつつもこれを愛す主人公。この主人公爺さんもセコイのか太っ腹なのか、よく分からず(笑)
いい人ばかりが爺さんの旅をサポートしてくれます。
戦争のむごさ、とりわけユダヤ人にとって。それを感じさせます。ドイツ人って周辺国から嫌われてるの?日本程のイメージはないけど。
変に感動的に描こうというところがないのがいい。ラストはけっこうグッときます。見て損のないいい作品です。
思ったより奥が深く泣きました
頑固じじいのコメディと思い見ましたが、良い意味で期待を裏切る内容でした。
じじいの皮肉に笑い、優しさに笑い、人々の優しさに癒され、歴史に涙しました。加えてヨーロッパの風景、しかも行ってみたい国が多く出てきて、映画館で観る醍醐味がありました。
忘れかけていた歴史を、この映画は思い出させてくれます。
また、国や人種や世代の違いを良く表現しています。
是非観るべき映画です。
人生の清算と戦争の残酷さ
この映画の主軸は、二つあるように思われる。
一つは老い。
88歳のアブラハムは、明日には老人ホームへの入居が決まっている。死や痴呆が現実味ある恐怖として目の前に迫った時、過去の記憶と果たせていない約束が甦り、清算を思い立つ心情は、親が次第に老いていくのを体感する私にも、他人事でなく共感できる。
不自由な足を引き摺り、少し移動するにも息を切らしながら、それでも人生の最期にと、恩人である友を探しに旅立った老人の気持ち。
娘や孫に厄介者扱いをされているという孤独感を抱え、不甲斐なさや自尊心で偏屈になった心が、旅の途中で出会い、手助けしてくれた人々の人間味によって、少しずつ解きほぐされていく様が、心に染みる。
もう一つが戦争。
何故彼が、頑ななまでに『ポーランド』の一言を避け、ドイツを厭い、老体に鞭打って、遥かな地を目指すのか。
途切れ途切れに挟まれる回想や、語る思い出が、かつて彼の身に起こった悲惨な戦争体験を明らかにしていく。
私の祖父や祖母の世代の多くは戦争体験者であったが、自らその話題を語る人は殆どなかった。悪夢のような現実、心に刻まれた傷の深さは、過去の記憶としてさえ、思い出すのも口にするのも辛かったのだろう。
この作品の前に『ちいさな独裁者』を見ていたのもあって、戦時の命の軽さが胸に迫っていた。親も兄妹も目の前で失い、体に傷を負い、死をすぐそこに感じながら命からがら逃げ延びた彼の恐怖と恨みを、過去のものと割り切る事はできない。
それでも、あれほど嫌悪したドイツのホームに足をつけ、ドイツ人の彼女と抱擁を交わして別れた。人と人として向き合った二人の間の、小さくて大きな和解に、この映画は希望を託したのだろう。
主人公アブラハムの、偏屈で嫌味ながら、身嗜みもお洒落でプレーボーイな一面も伺える、憎めない老人像がこの映画のミソ。コミカルな展開も交えて、重いテーマを暗くなりすぎずに描いている。
再会を果たした友人と、見つめ合い、互いにじわじわと疑念から確信、驚き、喜びへと変わっていく感情変化を、二人の老俳優が表情だけで演じ切っていたの、は素晴らしかった。
人生の最期、彼が帰りたかったのは、追われた故郷であり、幸せなあの頃であり、家族同然の友の傍らであった。
「家へお入り」でなく「家へ帰ろう」と言った友人には、それが身に染みて解っていたのだろう。
うちヘ帰ろう
いつもおもうのですが現実にああいう良い人ばかりがいる訳では無いのでしょうが感動する映画です。孫のせびり形にも現実感が溢れています。親子の間にもほのぼのした感じもあり、現実感もあり上手く描けていると思います。映画は
単純に面白くて泣ければ良いのかもしれません。
歴史認識
物語はいたって単純で結末も予想できるため最後の展開も置きに行った感じがあってそんなに感動できない。
ヨーロッパ圏の人々にはこの物語が身にしみて感動する素養があるのかもしれない。
70年経っても消えない:娘のタトゥーは...
ホロコーストのトラウマについての話だけどユーモア要素が効いていて、見やすいです。
観客の間口を広げるという意味では見やすいのはいいことです。
アブラハムはアルゼンチンに移住しているホロコーストの生存者です。
ポーランドからアルゼンチン。遠い。
その距離を、気候も文化も異なる地への出立を促した傷を、想像して切なくなります。
移住後はポーランドへ戻ることもなく、ポーランドと口にすることもなく生きてきたものの、娘たちに老人ホームへ入れられる段になって、ポーランドの友人と交わした約束が去来し、発作的にポーランドへと旅立ちます。
ドイツ乗り換えはもってのほかなのでマドリードから電車でポーランドを目指します。
マドリードではホテルで所持金を盗まれてしまって大ショック!
ホテルの支配人女性と飛行機で隣に座った青年が助けてくれて、マドリードにいるが喧嘩別れした末娘に資金援助をイヤイヤ頼みにいきます。
末娘、態度は硬いですが左腕に6桁くらいの数字のタトゥーを入れていて、アブラハムに見られてしゃっと隠します。
おわかりの方にはみなまでゆうな、無粋ぞとたしなめられそうですが、いっちゃいます。
あの数字はナチスが強制収容所に連行したユダヤ人やその他の人々に入れた「囚人番号」で、当然アブラハムにもあります。
末娘さんは父の悲しい過去を自分の体に刻んでいた、というわけです。
おそらくこの末娘が一番深く強く父を愛したという証ではないかと思わせるシーンです。
その後列車でフランスについて、ドイツを通らずポーランドに行きたいと駅員に筆談とスペイン語で言います。
ドイツもポーランドも口にしたくないから文字で示し、ドイツに立ち入りたくないからドイツを避けたルートを出せという。
望む案内はしてもらえずふてくされていると、女性がスペイン語で助けを申し出てくれる。
この女性はドイツ人で、スペイン語もイディッシュ語も話せる。ホロコースト被害者への贖罪の気持ちがある人です。
ドイツ人を嫌うアブラハムの無礼な態度にめげずに、助けてくれる素敵なひとです。
どうしても乗換でドイツの駅に立ち入るしかなくて、どうにかしろと騒ぐアブラハムに、彼女の荷物をホームに敷き、その上を歩くことでドイツに立ち入らないwという一休さん的とんちで対処します。
この辺りのシーン、いいですね。
ドイツ人の彼女が、21世紀の世にいきていてユダヤ人に償わなければいけない責任はないんです。
その上で、過去に自分の属する文化圏の人々が犯した罪を自らの罪として背負って生きる、今も今後も償うという姿勢が、わたしは尊く思います。彼女の矜持は正しいと信じます。わたしもそうしなくてはいけないと思います。
無事にドイツを踏まずに乗り換えしたものの、電車内で倒れてしまいポーランドの病院でアブラハムは目覚めます。
看護師の女性に助けてもらい、かつての自宅へ行きます。
全編にわたり、妹と友達と楽しく過ごす子供時代、収容所から命からがら逃げてきたシーンなどが回想として挿入されます。自宅はポーランド人の元使用人に奪われてしまい、家には入れない。使用人の息子である友達が、かつての使用人部屋へアブラハムを運んでくれて命をつなぐことができた。彼のためのスーツを渡したい。
近くまで来て帰ろうとして、やっぱり諦められなくて家を振り返ると友達と目があった。70年以上振りの再会です。
お互いに老いたけど、会えた。よかったねぇ。素直にそう思いました。
70年経っても忘れられない傷はあるっていうことに、改めて打ちのめされました。
死んでしまうよりは生きてるほうがいいけれど、それでも消せない怒りがある。忘れることのできない恨みがある。
誰かをこのような立場に引きずり込む権利を、何人も持たないはずだと思います。
でも、アブラハムだけではないですよね。
無数にいる傷つけられた人々を思い、人の傲慢さを改めて噛みしめました。
偏屈ジジイの友を訪ねて三千里
アルゼンチンに住む88歳の足の悪いお爺さんが、いきなりポーランドを目指すお話。
母を訪ねて三千里のマルコよりかは旅の苦労はありません。(93分映画だし当たり前か。)現代的に軽すぎたのも私の評価に繋がらない一因。
まあ、いきなりポーランドへ行く理由も足が悪い理由も序盤語らず、徐々に判明されて行く。
序盤当初から家庭事情があるにせよ、余りにも偏屈なジジイ姿が自分の親父にかなり似ており、あの認めない姿や変な所で頼ってくる姿には正直共感出来なかった。(重ねちゃいけないとは思うが、、、。)
ポーランド行きに対する行動は戦争の歴史があるにせよ、彼の想いがあるにせよ、そこにこの映画の面白さがあるにせよ、高評価の皆様程は楽しめなかった。
さらっと過去ホロコースト事情、70年来の友人との再会を描いた良作と言う事は認める。
しかし、父と娘のあの腕の刺青理由も語って頂きたかったものだ。(大体検討はつくが)
最後は良かった。
【70年前の恩義に報いる、88歳の男の極上のロードムービー。傑作である。ラストの多幸感は忘れ難い作品でもある。】
ー2018年末に観た極上のロードムービーが地元の映画館の大スクリーンで週末から掛かるので、投稿。(関係者では勿論ありません)ー
幼少期のナチスから受けた忌まわしい記憶が根深く残るアルゼンチン在住の老人がある想いを遂げるために多くの人に支えられながら(含むドイツ人)故郷へ向かうロードムービー。
人の善意に支えられ(ある地域を通らずに)国境を越えていく”相棒ツーレス”と88歳のアブラハムの姿。
原題:THE LAST SUIT。
彼の信念を貫く強さとラストには涙が溢れる。
随所に笑いも散りばめられ、飽くことがない極上のロードムービーである。
ええ、勿論再度大スクリーンで観ますよ、私は・・。
<2018年12月29日 伏見ミリオン座にて鑑賞>
<2019年1月 地元の劇場で再鑑賞>
分かり易くて面白い❗
星🌟🌟🌟🌟ちょっと難しい作品かなと思ったのですが、全然そんなことなくお年寄りから若者まで楽しめるロードムービーでした❗軽めのタッチでドタバタしながらストーリー展開していきますがナチスの虐殺や死の行進など第二次世界対戦のことも盛り込んでいて楽しいなかにも戦争についていろいろ考えさせられる作品でした❗特にドイツの駅でドイツ人の女性と話すシーンの妹が1ヶ月遅かった❗のひと言は涙をそそられました❗ストーリーもいいけど主役の俳優さんが凄く良くてラストも涙ものでした❗オススメの作品です❗
軽妙過ぎる
施設に入れようとしている家族から逃れて70年前の命の恩人に会いに行くロードムービー。ホロコーストを題材にしながらユーモアを交えて軽妙に語っているようだが軽妙過ぎる印象。頑固爺さんの気儘な一人旅でしょうか。
2019-48
俺の右足はトーレス、左足はメッシだ。
ツーレスの意味が解らなかったので、アルゼンチンの選手の名を付けてみましたが、映像から伝わってくるボロボロとなったアブラハムの右脚は痛々しかった。反ナチスの映画はハリウッドを中心に定番となっているのですが、このロードムービーの中にドイツ人女性を魅力的に描いていたことが特徴として挙げられます。頑なに「ドイツの国を通りたくない」「ドイツの地に足を下ろしたくない」と、拒み続けていた88歳の老人アブラハムが文化人類学者のイングリット(ユリア・ベアホルト)に心を許す瞬間が美しい。ドイツ人は反省している。ユダヤ人虐待した史実を70年間ずっと恥ずかしい記憶として捉えているのだ。とにかく、おでこにキッスなんてのも恥ずかしいようで、美しいのです。
アブラハムの娘たちは老人ホームに入れたがるだけだし、脚を切っちゃえと言ってくるし、もう子育ても終わったのだからと、突如家出をする始末。頑固で狡猾な彼のDNAを受け継いだかのような孫娘も面白いし、10歳以下の女の子に対しては特別な思い入れがあることもうかがえる。ただ、旅先で出会う女性たちは魅力的な女性ばかり。宿屋の女主人ゴンザレスもいい関係になりそうだったし、イングリットとも心打ち解けたようだし、最後の看護師ゴーシャ(オルガ・ポラズ)なんて、色っぽいだけでなく、彼の人生を支えてくれそうなくらい優しい女性だ。
「ポーランド」という言葉をも頑なに口にしないアブラハム。腕には迫害されていた時に彫られた数字も出てくるのですが、末娘(40歳前後か?当然戦争を経験していないユダヤ人)の腕にも数字が彫られていたことが印象に残る。鑑賞中ずっと気になっていたので、ネット検索してみたくなるほど。なるほど、イングリットのパターンとは真逆であるけど、過去に起こった負の遺産を伝承していく重要性をも訴えていたのだと納得。
93分と短めではあるけど、色んな要素がぎっしり詰まったロードムービー。スペイン語が基本だけど、イディッシュ語や様々なヨーロッパの言語が飛び交う作品でもありました。また、おじいちゃんが案外お洒落なのも仕立屋をやってたから。最後までスーツが登場しないのも良かった。70年前の約束という一途な信念が人とのコミュニケーションで巻き起こす笑い。さらに亡き妹や家族の楽しかった記憶などが、過去の迫害後の瀕死状態の映像や列車の中で見た恐怖の幻影とも対比され、感情を揺り動かされる映画。もちろんラストは号泣必至です。
家とは、生まれ育った家屋・土地、そこに居る人
私にとって、家(うち)とは、
夫の居る場所。
そう定義していた。
一人娘が生まれた。
娘が経済的にも精神的にも総合的に独立するまでは、
両人共大事だけれども、
娘に比重を置き、
その後は、末永く夫の方を大事にしよう、と決めていた。
(孫が生まれたら、また、優先順位変わるけど)
しかし、
この映画の結末は、
兄弟同然に生まれ育った
赤の他人(血縁関係無し)
と老後を暮らしていく事だった。
遠くの親戚より近くの他人?
もうちょっと深く掘るのかと思ってた娘とのやり取りがあっさり過ぎて、道中ずーっと人の親切に助けられてて、そういうことがいいたいのかしら?と。イマイチ監督のハラが決まらないまま撮りだしちゃったみたいな印象でした。
霧と夜
70年経っても、一歩たりともドイツの地を踏みたくないというアブラハムの行動に、改めて、ホロコーストの残虐さ、恐怖を痛感する。
彼を助ける文化人類学者のドイツ人女性が、過去に対する責任を明言する姿勢に、自分の歴史との向き合い方を考えさせられた。
親友との再会のシーンは、そんな中でも信じることのできる人間も(一部には)存在することを示している。
感動&感動で涙腺崩壊でした~
移住先のアルゼンチンで仕立て屋として一家を為したユダヤ老人アブラムが、70年前、自分を救ってくれた友人との約束を果たす為、ポーランドへの帰還の旅に出るお話。空路でスペインへ、そして鉄路でヨーロッパを横断する旅はハプニングの連続でしたが、ナチスを擁したドイツは絶対に通りたくない、と言う頑固なまでの彼の主張は、決して見得や面白半分で言っているのではなく、ホロコーストの辛酸を舐めた彼なりの心の叫びだった筈。その難問をどのようにクリアしたかはネタバレになるのでここでは書けませんが、それだけにラストのシーンは本当に胸を付かれました。ポーランドの人がスペイン語ペラペラなのはひょっとしたら突っ込みどころだったのかも知れませんが、そんなことに構っていられない程、主人公の魂と気迫を感じた作品でした。ただこの作品はこのような真摯なテーマを帯びているにも拘らず、全体にとてもウイットが効いていたように思います。旅の途中で出会った様々な人達とのちょっとお茶目にも見える交流はこの作品の本当に良いアクセントになっていたと思います。ハンカチ必携。
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