「影絵たちが演じる「セカイ系」」ペンギン・ハイウェイ マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
影絵たちが演じる「セカイ系」
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アオヤマ君と謎のお姉さんの関係が世界に投影され、危機が訪れる。そして問題の解決が世界の救済につながる。実存のレベルの謎が世界の謎と直結していて、実存の問題の解決が世界の救済につながる。いわゆる「セカイ系」の物語だ。
社会学者の宮台真司は、セカイ系の本体は軽くなった「現実」だと指摘していた。そう、「現実」が軽く希薄なのだ。細田守監督『未来のミライ』でも気になったことだが、キャラクターに固有名がなく、「おとうさん」「おかあさん」「お姉さん」などと呼ばれる。ただの記号だ。軽くなった「現実」では、固有名のないキャラがご都合主義的にセカイ系のお遊戯を演じる。何の痛みも感じられない。
だが、作品の質とは関係なく、蒼井優の声はよかった。マイケル・アリアス監督『鉄コン筋クリート』のシロ役同様、目を瞠る素晴らしさだ。
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