「あるがまま、理性よりも感性で受け止めたい映画」ペンギン・ハイウェイ 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
あるがまま、理性よりも感性で受け止めたい映画
【追記】
原作者 森見登美彦さんの最新著作『熱帯』を読んで感じたことがこの作品理解に多少は役立つと思い、追記します。
『熱帯』で描かれたことのひとつが「想像力の駆使」だと感じました。そして、本来、世界を広く自由に飛び回るための想像力も使い方を誤ると世界を閉じてしまうことがある。
個人的にはそんなメッセージを受け取りました。
『ペンギン・ハイウェイ』は対比的に言うと「想像力の獲得」或いは「想像力の創造」がテーマのひとつだと受け止めてます。
アオヤマ君は❶起きている事象を有り得ない、と無いことにせず、まずは受け止める❷仮説を立てる❸検証(実験)する❹ひとつの解を導き出す❺新たな疑問(謎)が生まれる❻新たな仮説を立てる
以降はこのパターンを繰り返し、どんどんノートが厚くなる。
豊かな想像力、というものを持って生まれた天分のように誤解することがあるが、実際は、アオヤマ君のように新たな知見の獲得があるからこそ、次にこんなことが起こるかもしれない、と想像を働かせることができるのだ。
アインシュタインだって、光速度不変の原理という知見を得たからこそ、時間が伸び縮みすることが想像できたのではないだろうか?(違ってたら済みません)
アオヤマ君の行動は物語的に楽しめるように、やや出来過ぎに描かれていますが、その過程は我々が想像力を働かせる時にも同じようなことをしてるはずです。
その過程が実にしっかりとしているからこそ、アオヤマ君はお姉さんとの再会に至る道筋(自分がこれから、何をどのように研究していくべきか、勿論その中には挫折や紆余曲折も含まれる)を想像する力を獲得できたのです。
(以下、最初の投稿)
あるがまま受け入れるだけで、こんなにも清々しく、気持ちのいい映画は初めてです。
SF的設定や謎解きが絡むとついつい、理屈に合わないのでは、とか、都合が良過ぎないか、とか真面目に回収作業に取り掛かってしまう人もいると思いますが、この映画でそれをやったら不粋な気がします。
お姉さんの造形(顔、表情、声、スタイル、仕草…)、少年とその友達、ペンギンに仮託されて描かれていること。
そういったものすべてを必然性とかテーマとかの文脈から切り離して、自身で追体験しながら物語の中に飛び込んでください。自分にもこんな感性(それが何なのかは人それぞれですが)があったんだ、或いは、まだ残っていたんだ、という心地よい驚きが味わえると思います。
声優さんや宇多田ヒカルさんの主題歌もこれ以外は考えられないほどぴったりハマってます。
すみません。途中で力尽きましたが、とりあえず琥珀さんの疑問にお答えするところまではコメントを追記いたしました(^-^;)
まだ残り半分の「進化という観点から見たときの、人類とヘプタポッドの位置づけ」というテーマの部分が書けていませんが、すでにかなり込み入った話になっているので、一度目を通していただけるとありがたいです。
自分のレビューの方にも、同内容のコメントを書きましたが、念のため。
今回琥珀さんが出してくださった問いは、進化という観点で見たときの、人類とヘプタポッドの位置づけを明確にするものだと思っています。ですので、琥珀さんさえよろしければ、ぜひ私の方で回答させていただきたいと考えています。
ただ、内容が完全に『あなたの人生の物語』についての話になってしまいますので、私の解釈は『メッセージ』のコメント欄に“追記”という形で書いた方がいいのかなという気がしています。その際、琥珀さんのコメントを引用させていただいてもよろしいでしょうか?
はい、おっしゃる通りで、無理があります。想像力で発想の扉を狭めてしまう一例を自ら示したようなものですね(笑)
先日のリバイバルで観た時に『メッセージ』とダブってみえた直感的なイメージをそのままお伝えしました。
小説版は以前読みましたが、もしかしたらその時の独自解釈の残像的なものが影響しているかもしれません。
琥珀さん、コメントへのご返信ありがとうございます。いきなりものすごい問いかけですね(笑)
まず『2001年宇宙の旅』と『あなたの人生の物語』は、どちらもあくまで想像の産物(フィクション)であり、別々の作者による全く無関係の作品であるため、それぞれの作中に登場する知的生命体を結びつけて論じるのは、さすがに無理があるのではないかと思っています。
しかし、だからと言って「無関係!」「ナンセンス!」と断じるのも面白くないので、上記の前提に立った上での、私なりの解釈を述べたいと考えています。ただ、結構込み入った話になってしまうので、少々お時間をいただけますでしょうか……。
ちなみに琥珀さんは、アーサー・C・クラークによる小説版『2001年宇宙の旅』はお読みになりましたか?
琥珀さん、お久しぶりです。コメントありがとうございます(^―^)
何度か別の作品で琥珀さんの名前をお見かけしていたので、
コメントをいただけないかなぁ、とソワソワしておりました(笑)
今月に入ってからレビューを更新されていましたね。
追記内容がとても興味深くて、もう一回「共感した!」を押したいぐらいです(笑)
『熱帯』は本屋で平積みになっているのを見かけるたびに気にはなっていたのですが、まだ読めていません。
小説は文庫になってから読む主義(ただの貧乏性)なのですが、琥珀さんのコメントを読んで、俄然興味がわいてきました。
そういえば、『ペンギン・ハイウェイ』のソフト化がいよいよ今月の末に迫っていますね!
アオヤマ君とお姉さんに再び会えるのが今からとても楽しみです♪
原作も読みましたが、どちらが先でも2度感動出来ます‼︎
原作への敬意、キャラクターへの思い入れなどは『この世界の片隅に』と比べても遜色がないほど、誠実に映画化に取り組んだように思います。
それにしても、蒼井優さんの〝お姉さんぶり〟は凄いですね。私が原作者だったら嫉妬してしまうほどの表現力でした。
それが君の答えか、少年?
蒼井さん以外の声が想像できません。