「ほんのちょっとの気づき」判決、ふたつの希望 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
ほんのちょっとの気づき
レバノン社会は複雑だ。18もの宗派が存在し多くの紛争を経て、多様な人種が暮らしている。普段は「配慮」して口にしない感情は、だれの心の中にもある。
きっかけはささいな口論に過ぎなくても、それが人種対立というフィルターを通して拡大されれば、国を揺るがす大事態になる。それほどまでにレバノン人の心の底にくすぶる何かを呼び起こしてしまうものが、映画の中に描かれている。
人間だから誰もが許せないことはある。しかし、重要なのは相手もまた自分と同じ感情を抱いていることに気がつくこと。手を取り合ったり、抱き合って和解する必要はない、ただ、相手を自分と変わらない人間だと認識することで、不毛な対立はずいぶん解消されるものだとこの映画は言っている。対立した2人の男の間に友情が芽生えたわけでもない。ただ「ああ、あいつも俺と同じなんだな」と互いに思えるようになっただけだ。
今日、世界中の対立で欠けているのはこの小さな認識ではないか。それに気づくだけで世界は随分よくなる気がする。
コメントする