洗骨のレビュー・感想・評価
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見事な俳優陣が監督の想いを結実
監督の脚本と演出は難しく捻ったりせず、「ベタ」と言えなくもないくらいの直球ストレート。
そして重苦しさを感じさせないよう、コメディ要素が随所に入ってくる。
こういう作品って「悪くないけど、よくある話」になりがちで、「笑って泣いて感動した」と思わせるのは意外に難しい(←個人的意見)。
しかし役者さんの力量が物語を支え切り、余計なことを考える暇もなく見入ってしまいました。
特筆すべきは奥田瑛二さん。
オカアに先立たれて酒浸りの情けないオトウそのもの。
知的でダンディなイメージの方が、こんな姿をさらして良いものだろうかと思ってしまうくらい腑抜け。
そして肝っ玉オバアの大島蓉子さん。
沖縄の太陽と海風は死者を数年で風化させてしまう一方、同時に旺盛に生命も育んて行くんだと、理屈じゃなく伝わってくる。
古謝さんの主題歌でエンドロールが流れる中、いい映画を観たなぁと素直な気持ちになり、映画館を出た後は「自分が生まれた時の話を聞きたい」という想いが湧いてきました。
母の偉大さと継がれるべき儀式
ゴリ監督らしく、笑えるシーンが満載で、笑って心が温まって、後半は、思わずホロっときてしまうステキな映画だった
そもそも、タイトルにある「洗骨」とは何か?
最初にタイトルを見た時にそう思った
その「洗骨」とは、沖縄の粟国島に今も残る風習で、死後4年が経ったご遺体を洗う儀式のこと
この映画の主人公一家では、お母さんが亡くなってから4年が経ち、「洗骨」のために家族が実家に集まるのだけど、その時には家族がバラバラになってしまっていた
そんな状態で、果たして洗骨ができるのかという話
そのバラバラな家族の様子を観ながら思ったのは、
生きていても、亡くなっていても、家族の中心にいるお母さんの偉大さ
お父さんも、息子も、娘も、お母さんを頼りにして、お母さんを通じて家族とつながっていた
だから、そのお母さんがいなくなってしまうと、家族は急に支えをなくし、バラバラになってしまう
そんなバラバラになってしまった家族にやってきた「洗骨」の儀式
それは、まるで家族がバラバラになってしまったのを見計らったかのようにやってくる
「家族がそんな状態では、お母さんは安心してあの世に行けないよ」と言いたいのではと思ってしまう
正直、これまで法事っていうのは、面倒なものだと思っていた
しかし、この映画を観ながら、亡くなったご先祖さまに対して
「私たちは、あなたがいなくても、仲良くやっているから安心してくださいね」
という姿を見せるための儀式なんじゃないかなと思った
そして、改めて「母の偉大さ」を思う映画だった
私の場合
仕事もプライベートも、うまくいかない時は、いつも愚痴をこぼす相手は母で
父の不調や、兄のプライベートを教えてくれるのは母だ
そんな母がもしもいなくなってしまったら、我が家も、この映画の家族のように
バラバラになるだろうなぁと思った
でも、いなくなってから、その偉大さに気づいても遅いのだ
だから、みんなが元気なうちにコミュニケーションをしておきましょうと
この映画は気づかせてくれる
そしてこの映画では、その「洗骨」がどのように行われるかが描かれている
すごくドキドキしながら見ていたけれど、まるで儀式に参加しているような厳かな気分になった
その「洗骨」の場面を観るだけでも、この映画を観る価値があるんじゃないかと思った
この映画を通じて「洗骨」という儀式を初めて知った
風化させずに残していくべき文化だと思うので、一人でも多くの人に観て欲しいと思った
ウチナーンチュでも知らない沖縄
ガレッジセールのゴリさん(照屋年之監督)が手がけた作品ということで、正直、あまり期待はしておりませんでした。(照屋監督、スタッフさん、キャストさんすみません…。)
物語の始まりから笑いの渦に包まれます。
笑いを誘うのが、島の人演じるゆうりきや〜の城間祐司さんで、沖縄の大御所お笑い芸人さんです。
母(妻)の死から4年後、洗骨の儀式のため、家族が集まります。
信綱(奥田瑛二さん)は妻の死を受け入れられず酒浸りの日々を過ごし、息子剛(筒井道隆さん)との親子関係は最悪。
名古屋で美容師をしている娘優子(水崎綾女さん)はシングルマザーとして生きる道を選び、家族の理解を得ようとするのですが…。
一見暗そうな内容ですが、絶えずに笑いがあります。
笑った後には涙涙で、また笑い、感情が大忙しです(笑)
観客を飽きさせない手法は、お笑い芸人でもある照屋監督だから作れた映画だと思います。
脱線しますが、タモリさんの言葉で、涙の意味は、
〝子供は自分のために大人は他人のために流す、感情のリセットボタン〟
と発した素敵な言葉があります。
優子が島の女性に悪いように言われるシーンがあるのですが、信綱の姉演じる伯母の大島蓉子さんが最高に格好いい。
『適当に傷ついておきなさい』
という言葉は、優子だけでなく、普段からいろんなことで傷つきやすい私にも胸に響き心癒されました。
あんな伯母が居て欲しかったなぁ…。
女性なら、こんな強い女性になりたいと憧れるのではないでしょうか。
女優大島蓉子さんをもっと知りたいと思いました。
妻恵美子が信綱の前に一瞬だけ現れるのですが、信綱が愛した女性がどんな人だったのか、たったワンシーンですが想像ができます。
信綱が何故4年も立ち止まったままなのか。
男女が恋に落ち、夫婦になり、親になり家庭を築き、家族の原点は人が人を深く愛した時に訪れるものだということを、信綱の弱さから、改めて気づかせてくれます。
子供たちにはわかることのできない、夫としての思い。
子供たちも家庭を持ち、離別があり、親の有難さに気づく。
離れても、いつかまた、家族が一つになる日がやってくる。
見事なキャスティングで、素敵な映画でした。
照屋監督の舞台挨拶付き上映ということで、上映後に観客とのトークディスカッションもあったのですが、観客には洗骨を経験された方や粟国島の方や粟国島と関わりのある方もおり、経験者の方は昔洗骨を経験し怖かったという思いが映画を観て変わった、とおっしゃっていました。
照屋監督は、洗骨を経験された方からこれは洗骨ではないと言われるのではなく、そのように言ってもらい良かったとおっしゃっていました。
本島に住んでおり40年近く全く聞いたことも知ることもない洗骨でしたが、洗骨という風習に、怖さよりも神秘的だという思いが先にきて学べたことは大変良かったです。
家族と、恋人と、友人と、一人で、どなたにでもおすすめできる映画です。
生きることが愛しくなる映画
いっぱい笑って、いっぱい泣きました。
照屋監督のすごいところは、感動のシーンにも笑いを散りばめてくるところ!
しかも、その笑いを入れることで感動が切れたり薄れたりすることなく、
むしろその笑いによって、感動のシーンがより豊かに人間らしいシーンとなり、愛しさがこみ上げてきます。
声を出して笑いながら、一つのシーンで二度目の涙が流れていました。
沖縄の持つ俯瞰的な目線と言いますか、大らかさとでも言いますか。
自然が豊かなぶん、生と死が近いのかもしれませんね。(アグリ島にはあの世もあるし)
だいたい、普通にヤギがいたり、家の前の道に椅子とテーブルを出して、おじいがサンシンを奏でていたり…私の日常とはかけ離れた風景が驚きですし
美しい海、美しい空。いつも音楽があり、踊りがある。
この風土によって独自の文化が生まれたのだなぁ。と感じました。
その独自文化の最たるものが「洗骨」なのでしょう。
この土地だから出来た風習…
ってか、この風土でないと無理〜!!!
今回初めて「洗骨」という言葉を耳にしたのですが、勝手にカタコンベにあるような、完璧に白骨化した古い先祖の骨を洗う儀式を想像していました。
でも映画のなかの説明によると「風葬」で、土に埋めるのではなく、棺に入れたまま冷暗所に置いてミイラ化した骨を洗う行為と知り
えっ?ミイラ??
しかも亡くなって4年で洗骨…。
そこそこ新しいのでは?
エジプトのミイラは見たことあるけど…4年だと、どんな状態のミイラなのか :(;゙゚'ω゚'):
墓暴きの『ザザンボ』がよぎりました。
いったい監督は「洗骨」のシーンをどのように撮るつもりなのか?
まさか、ミイラを画面に写す気なのかしら…(;´д`)
でも、その不安とちょっとした恐怖は、主人公家族も同じ。
変わり果てた家族を目にするのですから、なおのことでしょう。
母親の葬儀から4年後。
洗骨の為に故郷に戻ってきた子供達と父親との、洗骨までの日々の出来事を一緒に追ううちに、私にもこの家族の「洗骨」に立ち会う覚悟が出来ました。
むしろ、この家族の「洗骨」に立会いたい!と思えるほど。
ネタバレになるので、これ以上は書きませんが
驚きと愛の詰まった「洗骨」シーンを、ぜひ劇場でご覧いただきたい。
その土地に必要だったから生まれて、その土地に必要だったから受け継がれてきた文化。
よそ者の私ですが、洗骨の儀式を通して島がどれだけ命を大切に育んできたかを感じることが出来た気がします。
そして、エンドロールで『童神』が流れます。
歌声と歌詞が心に響いてまたもや大号泣。
まるで映像にはない、これから先の新城一家が見えるかのようでした。
暖かい涙をたくさん流して、沖縄の空のように晴れやかで清々しい気持ちになれました。
照屋年之監督の次回作にも期待します!
#洗骨#洗骨感想
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