劇場公開日 2018年8月4日

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「新海誠愛に溢れる三作品」詩季織々 えねころろろさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5新海誠愛に溢れる三作品

2020年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

北京、広州、上海、中国の三つの都市を舞台にした三つの短編作品。
それぞれのストーリーにつながりはなく、一つ30分程度で終わるので時間がない時には分割して鑑賞しても大丈夫です。

一つ目の短編「陽だまりの食卓」では中国の家庭料理であるビーフンを通して、一人の青年の思い出の日々が語られます。時には家族との思い出。時にはほろ苦い初恋の思い出。地域が違えば異なる顔を見せる家庭料理と同様、人が織りなす物語はビーフンの具のように様相を変えます。
この短編ではビーフンの作画に力を注いでおり、主人公の食レポも相まって食欲を沸かせます。
二つ目の短編「小さなファッションショー」はモデルの姉と、服作りが得意な妹の姉妹の物語です。
個人的にはそこまで心が揺さぶられる話ではありませんでした。姉の性格がどうも苦手で、逆に良かったと思った所は声優の安元洋貴さん演じるオカマのマネージャーの演技。
三つ目の短編「上海恋」ですが、開始直後の主人公のモノローグがまさしく新海誠感溢れる物でつい笑ってしまいました。上記の二つと比べると、一番新海誠作品を意識している作品です。
カセットテープによって紡がれていた少年と少女の恋の記憶が、引越しの荷物から偶然見つけた彼女の最後のメッセージを記録したカセットテープを見つけることで再び紡がれます。この作品に関してはもっと尺があっても良かったんじゃないかと思いました。30分ですとやはり展開に急な部分もあり、もっとゆっくりと主人公とヒロインのやりとりを観たかった所です。

劇伴や演出などのストーリーを彩る一要素が、すごく新海誠監督をとてもリスペクトしているように感じました。新海誠監督作品を全部観終わったがそれでも新海誠成分を補充したい、そんな方におすすめです。

えねころろろ