「テロ被害の追体験」ウトヤ島、7月22日 ailer777さんの映画レビュー(感想・評価)
テロ被害の追体験
行きつく暇のない72分間だった。実際の事件の発生から収束までをリアルタイム、ワンカットで再現、聞こえる発砲音540発も再現している。POVなので緊迫感と圧迫感が凄まじい。
最初には主人公たちと同じキャンプ参加者目線なのかと思ったが神目線というか透明人間目線だった。ひたすら主人公のそばで主人公と同じ目線で追体験するテロの恐怖。この惨劇を見ているのはカメラではなく自分の目なのだ。
POVには「なんでこいついつまでもカメラ持ってんだ問題」がつきまとうが当事者たちの混乱や恐怖を描くには最適な手法だったと思う。
遠くから鳴り響く発砲音と悲鳴。誰もがパニックに陥っていて犯人の人数さえわからない。
黄色いコートを脱げと言っても頑なに手放さなかった少年。
喋るなと言っているのに悲鳴を上げようとする少女。
逃げようと言っているのに母親に電話をかけ始める主人公。
誰もかれもが見ていてもどかしく冷静な行動を取れない。そりゃそうだ、あそこにいたのは10代の普通の少年少女たちだったんだから。
犯人や周囲の描写がないから映画としては微妙、B級ホラーなどというレビューもあるがそこをもう一歩踏み込んで是非テロは身近でそして無差別に降りかかる恐怖であるという日本に住んでいると実感しにくい事実をその目で感じてほしいと思う。
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