「乱射テロのリアル」ウトヤ島、7月22日 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
乱射テロのリアル
2011年7月22日に発生した、ノルウェーの連続テロ事件のうち、ウトヤ島銃乱射事件を題材にした作品。
生き残った人々の証言を基に、ドキュメンタリータッチで描いているが、登場人物やストーリー展開はフィクション。
で、この映画の主人公は、ポスターメインビジュアルのカヤという女の子。
大学生くらいかな?
面倒見がよく、責任感の強いお姉ちゃんタイプ。
彼女をカメラが追うのだが、約90分中72分がワンカット撮影。
母や姉に反抗的な妹を説教するところから始まり、乱射が突然発生して、そこから逃げまどう様を描いている。
そもそも何が起きているかわからないところから、逃げようにも犯人がどこにいるかわからないあたり、すごくリアル。
音楽を乗せず、草を踏む小さな音などを拾う作りに、緊張感が高まる。
主人公の視点で追体験する感覚。
だから最初の方は観ていて、
テロこわい!
カヤは無事に生き残れるのか心配だ。
自分が同じ状況に置かれたらどうしよう。
みたいな気持ちが大きかったんだけど。
カヤの性格がめんどくさ過ぎて、イライラ。
実は人一倍精神が脆く、状況把握能力が低くて、感情に走って正確な判断ができないくせに、やたら理屈っぽくて口が達者、パニックに陥って支離滅裂な行動をしちゃう子で……
追い詰められて、「妹や友達を守る」って事で、自分はしっかりした人間と自己暗示でセルフコントロールするものの、精神の均衡をかろうじて保っているだけだったと判明。
ホラー映画だったら、真っ先に被害者となる隠れてセックスしてるカップルの、次に殺されるタイプ、といえばわかるかしら?
(ラブコメ漫画なら、「無理すんなよ」みたいな男の子にコロっと騙されて付き合っちゃうタイプ)
途中で「早く撃たれて死なないかな、こいつ」と期待するようになってしまったので、ちょっと違う趣旨の受け方になってしまった部分もあった。
とはいえ、自分は安全な場所で見て、そこそこの経験積んだ立場で他人事だから言えるだけ。
実際にその場にいたら、生き残れる自信はない。
極限において、大事なのは冷静さと客観性と分析判断能力だと、しみじみ思った。