劇場公開日 2020年6月20日

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「当時の文化人たちの心象を追体験するような作品」ドヴラートフ レニングラードの作家たち ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0当時の文化人たちの心象を追体験するような作品

2020年6月30日
PCから投稿

2時間の間、寄る辺のない魂の彷徨を見つめ続ける映画だ。事前の関連知識はあるに越したことはない。70年代初頭、それは文化的な自由度が増したソ連社会に再び抑圧の空気が立ち込めた時代だったとか。ドヴラートフも作家でありながら自らの作品を発表する機会が得られず、この何ら歴史的瞬間のない6日間を切り取った本作でも彼は、ただひたすら音楽のある場所、友人たちのいる場所をタバコを燻らしながら歩き続けるも、光が差す気配は一向にない。他の文化人の中には精神的にギリギリまで追い詰められている者もいる。正直、分かりやすい映画とは言えないし、取っ付き易くもない。6日間の彷徨はあまりに出口が見えないばかりか、人間らしい感情の揺らめきすら忘れそうになる。我々は心の置き所を見失い、ただ幽霊のように漂うのみ。まさにこの心境こそ、当時のドヴラートフを始めとする文化人たちの荒涼たる心象風景だったのではないかとも感じるのだった。

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牛津厚信