劇場公開日 2018年6月9日

  • 予告編を見る

「泥沼不倫の監督が描くダメ男の言い訳」それから とえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0泥沼不倫の監督が描くダメ男の言い訳

2018年6月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

面白かったなぁ
韓国映画なのに、まるでフランス映画を観ているかのような雰囲気の作品だった

主人公は小さな出版社の社長 ボンワン
彼は若い女性 チャンスクと不倫中
ある時、その不倫が妻にバレてしまい、妻は会社に乗り込むが、そこにいた新入社員のアルムを不倫相手だと思い込み、罵倒し、殴ってしまう…

その修羅場を観ていて呆れてしまうのは、優柔不断で甲斐性なしの主人公 ボンワンだ

既に愛情など遠い昔に無くしてしまった妻には強く出ることが出来ず
不倫相手 チャンスクの言いなりになり
新入社員のアルムを平気で犠牲にする

しかし、ホン・サンス監督とキム・ミニの泥沼不倫を頭の片隅に置きながらこれを観ると
社長と不倫相手の幼稚な関係を冷めた目線で半ば呆れて見ているキム・ミニの視線にぞっとする

そして、この煮え切らない男 ボンワンこそが、ホン・サンス監督そのものなのでは…と思えてくる

アルムにとっては、衝撃的で散々な一日だったのに
ボンワンにとっては忘れたい過去だというのが面白かった

皮肉なことに、ボンワンはある決断をしたことでいろいろな物を失うが、
それを起点にして仕事が好転し、飛躍する

これは明らかに夏目漱石の「それから」からの影響を感じさせる作品になっていて
ということは、それから、ボンワンは身を固めて仕事に邁進するということだけど
ラストシーンを観て
もしかしたら
そこから羽ばたいていくのは
アルムなのかもしれないなと思った

とえ