「戦争の爪痕。青春の傷痕。」芳華 Youth 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争の爪痕。青春の傷痕。
とにかく良かった。本当に良い映画だった。まさしく青春。いや青春と言うよりもやはり副題に使われた"Youth"という言葉のニュアンスが近しい気がする。青春と呼ぶには複雑すぎるし切なすぎる若き時代の日々。戦争のある時代に青春時代を送った者たちの、キラキラ眩しいだけでは済まされない日常は、それでもその「若さ」が光を放ち、芳しく華やいでいる。若さゆえの痛み、若さゆえの喜び、若さゆえの失敗、若かったから出来たこと、若かったから出来なかったこと、若かったから分からなかったこと、若かったから分かったこと・・・そういうものがこの映画には全部詰め込まれているみたいに感じた。もちろん、私自身の青春がこの映画の青春と重なる部分などはごく僅かしかない。時代も違えば国も違うのだから。それなのにこの映画を見て「あぁこれは青春だ。これは若さだ」と心底思う。そして胸がぐうっと締め付けられる。青春の普遍的な部分を丁寧に掬い取った作品だったからなのではないかと思う。
なんだかまるで半年の朝ドラを一気に2時間で観たような気分だったし、それに相応するような濃厚な内容。最初は中国の名前と顔を一致させるだけで必死だったはずの登場人物に対し、物語が進むにつれそれぞれ全員に思い入れが生まれて、それぞれが抱える青春の痛みや青春の悩みがヒリヒリと沁みるように伝わってきた。それぞれが時代と戦争と社会に翻弄されながら、懸命に自分の人生を模索し、それぞれに数奇な人生を歩んでいく様子は、最後まで目が離せなかった。模範生だったはずの劉峰は、人生の舵取りをほんの僅か見誤っただけでその後の人生が大きく変動してしまうし、そしてやっぱり小萍にどうしても情が移ってしまって、心を病んでしまってから、小萍はどうしているのだろうかとずっと気が気でなかった(入り込みすぎ?)。
最後にはしっかり老けた劉峰と小萍の姿が見られて逆になんだか安心した(そうはいっても31歳だが)。そう、若さは失われるものだし、失われてこそ若さは美しいものだ。若さが失われるところまでしっかり示唆してこそ、正真正銘の青春の物語だと確信する。少し老けたふたりになぜか胸がチクリと痛む。もう若くない二人に少し切なくなる。でもその切なさが追憶の中の青春をまた輝かせる。あぁやっぱり青春時代っていうのは、一瞬の輝きであり、特別な時間なんだなと思う。