「逃げたな」芳華 Youth よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
逃げたな
文革期に社会に出て、改革開放の時代に家族を成し子供を産み育てた、自分の親と同年代、もしくはそれより少し若い世代の、青春回顧である。
若かった当時は、どうにも計りかねていた人の心の中が、後年、ふとしたことで分かることがある。
相手の言動に納得がいかず、自ら別れを告げた恋。向うがどんなことを考えていたのか。今なら、分かるし、会えるものなら会ってそれを確かめてみたい誘惑にかられる。
青春の日々をともに過ごした人々の思いを、一人ひとり、一つひとつ丁寧にすくい上げ、思い出が再構成されていく。原作の小説をぜひ読んでみたいと思った。
ただ、映画は、あまりにもきれいにまとまり過ぎていて、出来過ぎ。
動くカメラはときに流麗でときに静謐。
女優陣はみなスタイル抜群。スタイル良すぎて、どの世代を描いているのかよく分からなくなってくる。個人的には好みだし、悪いことではないのだが、いくら選抜されたメンバーだからって、みんなが綺麗過ぎた。
中国の映画に「陳凱歌」や「張芸謀」を期待する、中国映画=第五世代などというこちら側の変わらぬ観念が、すでにして中国映画界に対して失礼なのは承知している。しかし、あれこそが私にとっての「Youth」なのだ。
そして、中国映画、中国文化への敬意の源もそこにあると言っても過言ではない。
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