「翻弄される運命と、美しい映像のコントラスト」芳華 Youth ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
翻弄される運命と、美しい映像のコントラスト
映像が美しい。
きっと若者の初々しさや、瑞々しさとは、こういう事だと思ってしまう。
つい40年ほど前の戦争によって翻弄された若者の話だ。
戦争はいつも残酷だ。
中国映画で、おそらく表現方法は限られているだろう。
また、自国をあからさまに批判するようなこともご法度なのではないだろうか。
ただ、毛沢東の死去をきっかけに、政治犯として捉えられていた親が解放されてくる話や、戦争で翻弄される若者達の運命、そして、エンディングに向かってシャオピンとリュウホウの二人が再会するストーリーに、世界中の多くの人々に共通する、過度な思想の締め付けや戦争に対する懸念・不安、そして、そんな過酷な状況の中でも変わらない若者たちの青春への郷愁などが、美しい映像とともに語られているように感じる。
多分、この映画には批判もあるように思う。
なぜなら、中越戦争は、中国が一方的にベトナムに仕掛けた戦争で、そんな背景は語られていないからだ。
ベトナムとの紛争で、中国が支援するカンボジア・ポルポト政権が崩壊したからというのが、その理由だが、朝鮮戦争で成果を上げていたことで、奢りもあったのかもしれない。
しかし、中国は、武器や装備で劣るベトナムに一方的に敗走することになる。
ただ、こうした史実を敢えて説明しなくても、多くの中国人は事実を認識しているのだと思う。
だから、抑えられた表現だとしても、こうした映画が作られて、中国のあちこち上映されているのではないだろうか。
若者が精一杯生きようとする姿は、どんな国にあっても美しい。
それが戦争によって翻弄されるのは、とても切なく、悲しいことだ。
月明かり浴びて踊るシャオピンは、息を呑むほど美しい。
ずっとずっと踊り続けて欲しいと思うほど美しい。
きっと、誰もが思うことだ。