「王道にして、100年前の懐かしさと目新しさは世代を問わず楽しめる」ダンボ ありきたりな女さんの映画レビュー(感想・評価)
王道にして、100年前の懐かしさと目新しさは世代を問わず楽しめる
昔観た原作のアニメを忘れてしまったので、原作との比較はできずに単純にエンターテイメントとして観ました。
お母さんと離ればなれになったダンボに、きっと自分たちを重ね合わせていたであろう姉弟たちの純粋さと一生懸命なところ。
外見や生まれ育ちなど、大人が壁を作ってしまいそうな所をひょいと乗り越え、フラットな視点で何でも捉えることができる点で、子供の視点で描くのは良かったと思うし、何となく今これが映画化されることが、現代の風潮にも少し合っていたような気がする。
姉のミリーちゃんは少し大人びていて、大人たちの現実も見えてきているからの葛藤もあるし、最後彼女が母の形見の鍵を投げてダンボが飛び立つところはベタだけど、こういうの悪くないなあと思うのです。
また、冒頭でホルトが帰還した際に「最も良い旅路は家への帰路である」というような言葉を投げかけられていたと思うのですが、
そっくりそのままこの映画がダンボの故郷への帰路につくまでの物語でもあって、あーディズニーは大人もちゃんと楽しめるように作ってますね?と思いました。
あとはティム・バートンらしい鮮やかな衣装や当時のヘアメイクの再現、特に戦間期の豊かさとアール・デコの時代を上手く表すドリームランドの建築物と、古ぼけたサーカスの懐かしさと色鮮やかな色彩の対比がすごく目にも楽しめました。
冒頭の方のサーカス団員たちが奏でるBaby of Mineが素敵でした。物悲しくて、でも美しくて。
コレットさんがめちゃくちゃ美女でびっくり…お化粧してない時の方が綺麗…メディチ・ファミリー・サーカスは今どこで公演やってますか…
個人的な話にはなりますが、幼少の頃ディズニーランドで何回も乗り続けたダンボのくるくる回るアトラクションとか、バレエ教室の発表会で踊ったケーシー・ジュニアのメロディーとか、ダンボに対してはそういったイメージが強く、若干過去への懐古・回顧という視点で観ていたかなあと。
最近『私の20世紀』という映画を観て、本作も設定が1919年と丁度100年前で、20世紀前半(20年開きはあるけども…)の物語を立て続けに観たせいか、
この時代の人たちにとっての「未来」というものに思いを馳せてしまうのです。
とりわけ未来を担う子どもであるミリーちゃんが科学者を夢見ることと、電気という"パワー"を持って偽りの夢を追いかけて破滅するヴァンデヴァーが対照的な存在でわかりやすいでしょう。
彼女は最後にコレットを乗せたダンボが飛ぶ様子を映写して楽しませています。トーキー映画の登場まであと少しのところ、シネマトグラフのような映写機での上映は、未来=技術の進歩だった時代の、正しく明るい未来の姿のように思えてなりませんでした。
終盤で"DREAM LAND"の頭文字Dが焼け落ち、Dの文字の入った衣装を身に纏ったダンボが火の海の遊園地から飛び立っていくシーンのように、技術を私利私欲や犯罪や戦争に使う人というのはいつの時代も絶えないけれど、それを見事に皮肉りながらも新しい未来を表す素晴らしいシーンでした。
そういえばダンボだってCGだもんね、最新技術の賜物。でも愛らしい顔の表情は私は好きだった。
ティムバートン節が足りないとか批判もあるようですが、やっぱりディズニーは誰もが楽しめてきちんと作り込まれた物語を作ってくれて、素晴らしいなあと思わずにはいられませんでした。
ディズニーランドのダンボの乗り物に無性に乗りたくなってきた。かつて少女だった私も、小さいお友達に混ざって乗ってこようかな…