「上を向いて歩こう」メリー・ポピンズ リターンズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
上を向いて歩こう
名作ミュージカル『メリー・ポピンズ』に、なんと50年ぶりの続編が登場!
と、最初の2文字で"名作"と書いておいて何なのだが、
自分は前作未見ですハイ。傘を差してる魔法使いの
ナニー(乳母)、くらいの設定しか知りませんでした。
そこから特に予習鑑賞もせず、前作の設定をざっくり
調べた程度で鑑賞に臨んだが――
本作はそのくらいの知識しかない自分でも問題なく
楽しめたし、何よりこの映画には、サッとカーテンを
引き開けて暗い部屋に日を差し込ませてくれるような
ポジティヴなエネルギーがあった。
...
立役者はメリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラント!
厳しく皮肉も飛ばすがお茶目で優しいステキな役。
彼女は『イントゥ・ザ・ウッズ』で歌声を披露したが、
今回はダンスも披露。ミュージカルの経験はあるらしい
けど、何せ演じる役が役だしね。毎回チャレンジングな
役できっちり魅力を発揮する彼女はやっぱ凄い。
そしてガス燈点灯夫ジャックを演じたリン=マニュエル・ミランダ!
この方、ブロードウェイミュージカルで主演どころか
作詞作曲も張る方だそうな。本作でもほとんど
主役級の出番で跳ねて歌って踊っての大活躍である。
大御所メリル・ストリープは怪しさ全開だったし、
前作に出演していたというディック・ヴァン・ダイクは、
ななんと御年93歳にしてジャンプ&タップダンス!
見せ場はやはり、豪華な舞台で繰り広げられる歌と踊り。
メリー・ポピンズがいよいよ魔法を披露するバスタブ・
オーシャンの場面は、青い海と空が明るく爽快。
イルカにアヒルにバブルにパラソル! オモチャ箱
を引っ繰り返したようなイマジネーションの洪水だ。
陶器世界で繰り広げられる『A Cover is Not the Book
(本は表紙じゃわからない)』も、ポピンズ&ジャックと
クラシカルなカートゥーンアニメのペンギンコーラス隊
の"共演"がカラフルで楽しかった。
夜霧の街を練り歩く『Trip a Little Light Fantastic
(小さな灯りを灯せ)』の場面は自転車や炎を使った
アクロバティックな集団パフォーマンスがド派手!
一方、『A Conversation(君はどこへ)』で父マイケルが
亡き妻へ問い掛ける「Where'd you go?」はしっとり
哀しく、こちらも個人的にお気に入り。
全編に溢れるリズミカルな言葉遊びも耳に楽しかった
(なお字幕版を鑑賞。吹替版での上映が多いが、
やっぱり役者さんの声で聴きたかったので)。
50年ぶりの続編ということで色々と現代的アレンジを
盛り込んでくるのかと思いきや、本作が見せるのは
あくまでクラシカル・ミュージカル路線。
油彩画と豪華なオーケストラで始まるオープニングから
往年のハリウッド映画の雰囲気が漂っていて「いよいよ
映画が始まるぞ!」という気分にさせてくれる。それに
作り手はあくまで役者陣のパフォーマンスで魅せること
に主眼を置いたのだろう。ミュージカルシーンの舞台や
撮影手法は良い意味でのアナログ感・手作り感があり、
50年前とは比べ物にならないほど進化した映像技術も、
当時の作品の雰囲気を醸し出すための自然な使用に
抑えていたと感じる。思い返しても「CGバリバリで
役者が目立たない」と感じたシーンが無かったものね。
逆に現代でこれをやるからこそ新鮮に感じる気もしますね。
...
だが、現代と相通じる部分もある。
映画の舞台は大恐慌時代のロンドンだ。困窮にあえぐ
バンクス一家は、家長マイケルはおろか幼い子ども達
ですら夢や魔法を信じられない。夢を奪うほどの
貧しさはきっと、今も昔も変わらない悩み。
そんな子ども達にメリーが施す教育がユニークだ。
彼女は、片付けや言葉などの一般的マナーについては
皮肉交じりにピシャリと注意するけれど、その他の
部分についてはああしろこうしろととやかく言わない。
基本的には子ども達が自ら考えて行動するのに任せ、
危うく足を踏み外しそうになったら助ける。そして、
何が良くなかったのか、どうすれば上手くいくのか、
さりげないヒントで子ども達を励まし導いてあげる。
そのヒントというのも具体的な解決方法に導くような
ものではなく、「考え方を柔軟にして色んなアプローチ
を試みてみたら?」というものである。
これって教える側にかなりの辛抱強さが
要求される教育方法だと思うのだが――彼女はきっと、
子ども達が自ら答えを見つけることこそに価値がある
と信じているし、子ども達(と、昔の子ども達)には
自分で答えを導き出せる力があるとも信じている。
考えに凝り固まって窮屈になってしまった頭じゃ、
きっと思い付けることだって思い付けない。だけど
イマジネーションを働かせて心を豊かにできれば、
頭は青空と同じくらいに広い場所にだってできる。
様々な視点から物事を見ることができるようになる。
おんぼろ凧の本当の価値にだって気付けるし、
たったの2ペンスが、いつかの誰かにとって
何物にも代え難い宝物だったことにも気付ける。
それにね、単純に、
ずっと下を見て歩いてるのはしんどい。
頭を上げて奇麗な青空を見るだけで、
何故だか心が軽くなってくるもんです。
メリー・ポピンズが教えてくれるのは、
明るい空を見上げて歩くことの大切さ。
...
野暮なお別れの言葉も涙もみせず、
颯爽と空へ去ってゆくメリー・ポピンズ。
少し寂しいけど彼女らしいし、きっと彼女も、
ここではないどこかで皆を見守ってくれるんだろう。
クラシカルで明るく楽しく優しい映画。鑑賞後、
心が3,4キロ位軽くなったような気分になれました。
大満足の 4.0判定で。
<2019.02.02鑑賞>
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余談:
今年初レビューとなりましたが、
遅らばせながらあけましておめでとうございます。
2019年もよろしくお願いします。
今年に入って11作品は鑑賞してるが、いやはやまあ
筆が進まないっすね。仕事やら何やら雑念だらけで、
劇中のトプシーおばさんの水曜日気分が続いてる感じ。
まあマイペースでいきます。よろしくです。
浮遊きびなごさん
お元気そうで何よりです。
前作のラストも凧上げで、みんなが空を見上げてるんですよね。今回は風船🎈。
でもその空にはメリーはおらず、みんなが見ていない空を一人で去って行くのは同じで切なさで胸がいっぱいになります。
ゴキです!
アリータをもう一度見たい!と思いつつ、
ヒックとドラゴン3を見て来ましたw
もし2を見てなければ、絶対に先に見て下さいw
既に2を見てたとしても、もう一度見直してから、
この3を見た方が超絶いいです!w
子供向けなんですがね、ヤバイほど意味が深いです。
どれほど深いかって言うと、
遠くはアンチ・メリーポピンズと言えるほど深いですw
これ日本では劇場公開あるんでしょうか?
1と2は劇場上映してませんよね?
こんな上質な映画を、許せんですね。
こちらも是非、長文レビュー、期待してます!