「「チム・チム・チェリー」のようなキラーソングがない」メリー・ポピンズ リターンズ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
「チム・チム・チェリー」のようなキラーソングがない
ディズニーが名作を54年ぶりに引っ張り出して続編を作った。これは「プーと大人になった僕」(2018)と同じ、"名作のその後シリーズ"である。テーマもストーリーも似ていて、企画はビジネス臭のする感じだが、「メリー・ポピンズ」ファンには関係ない(まんまとワナにハマる…)。
「凧をあげよう(Let's Go Fly a Kite)」で終わった前作。メリー・ポピンズが凧に乗って帰ってくる。
まだ1回しか観ていないので(何回、観る気だ?)、やすやすと結論は述べられない。しかしながら、このディズニー看板作品にほぼオリジナル曲で挑戦した、ロブ・マーシャル監督(「シカゴ」、「イントゥ・ザ・ウッズ」)の本気を感じられた。
華やかな映像の楽しさと、主演のエミリー・ブラントの存在感が強烈で、どちらかというと画に圧倒される作品だ。一方で楽曲の第一印象は薄い。
前作は、「チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)」や「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(Supercalifragilisticexpialidocious)」など、言葉遊び的なキラーソングがあった。それと比較しようもない。
もちろん、とても重要なバラード「幸せのありか(The Place Where Lost Things Go)」や、ダイナミックな踊りを見られる「小さな火を灯せ(Trip a Little Light Fantastic)」など、キレイな曲が並べられていて、平均レベルは高い。しかしすぐに惹きつけられる名曲がない印象だ。
むしろ、もっとオリジナルサウンドトラックを聴き込むことで、何度も楽しめるはず(と信じたい)。
ひとまずは字幕版を観たが、やはり今回は平原綾香の吹替版も観るべきだろう。「サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版」でマリア役を演じた関係で、同じジュリー・アンドリュースの演じたメリー・ポピンズ役で白羽の矢が立ったのだろう。
ちなみに、映画会社として名実ともに世界ナンバーワンとなったディズニーでありながら、90年以上の歴史を誇る米国アカデミー賞での作品賞を獲ったことがない。
今年は「ブラックパンサー」が、アメコミ初の作品賞にノミネートされている(ほか6部門)が、これはマイノリティ批判をかわす意図が感じられ、現実的に受賞は厳しいだろう。
前作「メリー・ポピンズ」(1964)は、ディズニー映画で最大の13部門のノミネートされ、5部門を受賞している。そしてジュリー・アンドリュースがディズニー・唯一の<主演女優賞>を受賞した、歴史上、特別な作品である。
「ウォルト・ディズニーの約束」(2014)では、この「メリー・ポピンズ」誕生秘話が描かれており、生前のウォルト・ディズニー自身がどんなにこの作品への思い入れが強かったかがわかる。
本作は作曲賞、歌曲賞、美術賞、衣装デザイン賞の4部門のノミネートされている。今年は素晴らしい音楽映画が多いので、美術賞か衣装デザイン賞ならば可能性があるかもしれない。
さて、吹替版は上映館が少ないが、今日はお台場まで観に行こう。
(2019/2/1/TOHOシネマズ日比谷/シネスコ/字幕:松浦美奈)