「忘れかけていたもの。」プーと大人になった僕 ナノさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れかけていたもの。
地元では字幕がなかったので、吹替版を観に行きました。
冒頭が絵本形式だったから、アニメより原作の挿絵に近いキャラデザだったのかな。
アニメも好きだけれど原作も好きだった私にとっては懐かしくて、あの絵を映画でも見られるとは思っていなかったから嬉しくて堪りませんでした。
そのままあのキャラクター達が画面に実写で登場し、原作の最終章。
「何もしない」を出来なくなるクリストファーロビンに「何もしない」を約束したプーさん、のあたりで涙が出ました。
寄宿学校、父親の死、出逢い、結婚、戦争、仕事。
「何かをすること」を常に強要され、現実の並に揉まれて子供の頃の無邪気な笑顔をすっかり失くしたクリストファーロビンと、
毎日のようにクリストファーロビンを思い「何もしない事」を続けるプーさん。
常に人で混み合い目まぐるしい変化を遂げるロンドンと、何も変わらない仲間と穏やかな時間が流れている100エーカーの森。
その対比の描写が常に出てくることで、クリストファーロビンがどれだけ変わってしまったのか、変わらざるを得なかったのかを鮮明に生々しく浮かび上がらせていました。
クリストファーロビンがプーさんにイライラしたり怒鳴ったりするシーン、プーさんの「ごめんなさい」や「僕は考えるのが下手だから」で涙、
最後のクリストファーロビンの「パパは考えるのが下手だから」の瞬間にプーさんがアップされた時は違う意味で涙。
キャラクターの声も、小さい頃から聞いていたものとなんら変わりなくて嬉しかったです。
クリストファーロビンは……うーん。
どうしても堺雅人さん本人の色が強くて別のドラマが頭をよぎってしまったり、たまに堺雅人さんの顔が頭に浮かんできたり。
他のキャラクターがイメージ通りすぎただけに少し残念だった、かなぁ。
ユアン・マクレガーさんの光をなくしたような目に、徐々に光が灯っていくのが見ていて惹き込まれました。他の出演作も見てみようかな。
私は幼少期のクリストファーロビンと大人のクリストファーロビンの中間くらいの年齢ですが、
今の時点で大人のクリストファーロビンに共感してしまうほどには童心を忘れかけてしまっていました。
「何もしない」は時間の無駄、効率のいいことが正しい。常に最短ルートを探さなきゃいけない。
そう考えるようになった自分と、何もしないことが毎日忙しかった過去の自分。
人生を楽しむために大切な、忘れかけていたことをこの映画が思い出させてくれたような気がします。
もし子供の頃にこれを見れたとしたら何を思ったのだろうか、働き始めて子供を持ってから改めて見ると何を感じるのだろうかと考えを巡らせ、
この連休、残り1日ではありますが「何もしない」を楽しむつもりです。