「母は女神であるべきか?」来る まこさぽチャンネル(さぽしゃ)さんの映画レビュー(感想・評価)
母は女神であるべきか?
柴田さんや松さんの容姿やストーリーから、「ポルターガイスト(1982)」や「帝都物語」が思い浮かぶ。
そこに「きみはいい子」のテーマがプラスされる。
本作もホラーの皮をかぶった、ネグレクト連鎖の話だ。
70年代~80年代にかけてのホラー映画を考えた時に、母は女神だった。
例えば変わっていく娘の姿に動揺しながらも、強い愛で守ろうとする「エクソシスト」の母。
娘を助ける為なら、どんなことでも無条件に受け入れる「ポルターガイスト」の母。
オーメン(予兆)が全てこの子のせいだと感じる母の違和感。罪悪感。自己嫌悪感。悪魔なのか愛する子供なのか、悩み苦しむ母の姿が息苦しい恐怖の「オーメン」の母。
母がダミアンを愛していたら、悪魔にはならなかった?という含み。
近年でも「リング」「MAMA」「仄暗い水の中から」など、ホラー映画の中では、母は女神であることが多い。
本作の女性はその呪縛から寧ろ逃れようとしており、面白い。
その点は評価すべきか。
ただネグレクトされた子は、そんな親になる(人格が異常になったり)的な部分が簡単すぎて。
その不安と葛藤が恐怖を生む「ヘレディタリー/継承」でしょ?
作品同士を比べるのに意味はないけれど、「ヘレディタリー/継承」が複雑な母の心理をホラー的に描いていたのに対して、本作はあまりにも表面的だった。
そもそも中島監督の女性の描き方は、いつも一面的で丁寧さに欠ける。現代女性はもっと多面的じゃないか?
嫌われ松子も告白(これは原作通り)もだけど、結論を丸く平たく削り過ぎてて刺さらない。
ただ何かに体を乗っ取られた登場人物に対して、松たか子演じる霊媒師が言う「弱いからですよ」に衝撃を受けた。女神のような母になれなかった女性に対して、世間は未だにこんな冷たい態度をとるんだろうなと。
なんだかんだ言って、中島作品の中では一番好きですね。