「そう"来る"か~~~!」来る ミーハーの戯れ言さんの映画レビュー(感想・評価)
そう"来る"か~~~!
とにかく派手!ド派手!
CGをふんだんに使った迫力のあるホラーシーン!
スタイリッシュな見せ方!
凄惨な場面と不釣り合いなBGM!
ビビッド!サイケ!ポップ!ロック!グロ!
個人的に派手派手ド派手!な除霊シーンがオタク心を擽るしっちゃかめっちゃかっぷりでテンション上がりました卍
俳優さん達も当たり前だけど凄く凄く演技が上手で、
だからこそ、非常に勿体ないな~と思ってしまいました。
原作読んだ視点で意見すると、ここまで原作が凌辱されてると最早一周回って凄く面白いものに見えてくるなと……
これは壮大で盛大な二次創作、というか最早三次創作、みたいな。
"エンターテインメント"を重視しすぎたのか、折角の原作の社会風刺や問題視されている点が、変な風に書き換えられてしまっているなと感じました。
原作未読なら楽しめるか?と言われると、そうかもしれない。見せ方がとにかく派手だから。「新感覚ホラー!なんか育児問題?とかも表現されてるし、ホラーだけどホラーじゃない!すごい!」ってなるのかもしれない。とっても大衆向けな話題性がある仕上がり。画面の圧が凄いから、見せ方も凝ってるしカッコいいから、現代の問題にも割りと時間をさいて描こうと努力してるから、役者さんが現代の問題を熱演しているから、そういうとこだけ観ると普通に、面白いかも、と、思う。
でもなんていうか、作品における女性表象があまりにもお粗末で悲しくなった。という話。そうやって言っちゃうとちょっとフェミ臭いけど。
原作だと男性と女性が対立しきっていなくて、
悪としての人間を悪と見たとき、それがたまたま男性だったり、
どちらも信念があるゆえに空回りしてベクトルの違う失敗をしてしまっていたり、
子供を持てないことがカップルのどちらのせいでもなかったり、
結婚して子供を持つことが素晴らしいことであるかのように語る人間にうんざりする人間がいたり、
今問題視されていることに対して攻撃的でない印象を受けた。
でも映画は、なんかちょっと違う。
感想検索したら比較的肯定的な感想が多くてびっくりしたので、自分のマイナス寄りな意見も述べてみたいな~と思って初めてレビューします。お粗末な映画とかエラソ~なこと言いながらこの感想自体がお粗末です。すみません。
以下ネタバレ
※あくまで映画も原作も一回観た(読んだ)程度のうろ覚えの個人の感想※
①真琴がキャバ嬢な要素、いる??????
原作だと1ミリもキャバ嬢ではない。バーでバイトしてる設定。映画内でもキャバな捏造設定は1ミクロンたりとも活きてない……あとここぞとばかりに刺青彫りまくってるキャラクターにされてたのが、なんだかなぁ……監督の偏見のようなものが透けて見えるというか……
②香奈という女性の処理が雑
(原作)
イクメンぶる夫に振り回され精神的に疲弊。それでも娘との時間を大事にしようとして、夫の友人に夕食の誘いなどされても頑なに応じない。夫が死んでホッとするも、夫が夫なりに命を懸けて妻と娘を守ろうとしたことに自ら気が付いて「夫が命を懸けて守ろうとした娘」を守ろうとする。娘を一度連れ去られるも死なない。(死なない。)
(映画)
イクメンぶる夫に振り回され精神的に疲弊。その結果育児放棄・男遊び(夫の友人と。夫が死ぬ前から不倫してた)に走る。
"ぼぎわん"襲来の気休めに玄関に盛り塩を置く野田に「今更言っても遅いかもしれないけど、それでも夫さんは命を懸けて妻と娘を守ろうとしたんですよ」(的なニュアンスことを)と言われるも、彼が去った後に塩を皿ごと踏み潰し嘲笑。無惨に"ぼぎわん"に殺される。娘は連れ去られる。
家庭崩壊→育児放棄→男遊びでケバくなる女性、の図が安直すぎて監督の先入観?が透けて見えるなと(必ずしも嘘の図式?ではないけれど)。しかもそういう女性が"何かよく解らないものに殺される"処理がされているのがなぁ……
家庭崩壊したのって、香奈だけのせいじゃなかったよね?
確かに秀樹も殺されるという処理がされてるけど(原作でも確かに死ぬ)、なんかこれだと「家事育児を放棄して『女の子はいつだって可愛くなくちゃ!(※映画のセリフ)』と男遊びに逃げた母」が殺されたように見えてしまう。オマケに男(夫)の努力を男(第三者)に伝えられるけどそれに気付けない愚かな女(妻)、みたいな……片寄った見方しすぎ?
③映画における"ぼぎわん"
そもそも"ぼぎわん"は、ブギーマン、つまりお化けっていう漠然とした恐怖でありながら、
原作だと「夫の酷いDVで三人いる子供のうち二人亡くし、一人は指に火傷を負う怪我をして、それでも我慢して我慢して、我慢しきれず夫を恨んだ妻」が呼んだものってなってる。
秀樹の祖母が呼んだものが、巡りめぐって秀樹の祖父も、秀樹も津田も惨殺していく。
昔は当たり前だった容赦のないDVや、そのもっと昔当たり前だった口減らし、現代で問題とされている児童虐待、その他もろもろエトセトラエトセトラの暗いものが"ぼぎわん"な筈なのに、映画では結局"ぼぎわん"が何なのかさっぱり解らない。メタファーが微塵も感じられない。
本当に一体何を伝えたかったの……?
映画もどうしたって尺というものがあるから、原作の良さを100%映像化できるとは最初から思ってない。
それにしたって、それにしたってこれはないんじゃないかなぁ……と、思った捏造要素や改編がわんさか。
ほんとはもう少し指摘したいけど問題点ありすぎて疲れた
勿体なかったです、何から何まで。普通に楽しめたシーンがあっただけに惜しい。奇をてらった表現も面白かったのにな。
でも、この映画があまりにも評価され過ぎるのはちょっと悲しいかも。
ラストも謎のオムライスの国だしね……あれが中島監督の味なんでしょうか?(告白も原作読んでたからがっかりしたけど、パコと魔法の絵本は素直に感動しました)
映画から原作に興味を持つ方が増えると良いな。
『ぼぎわんが、来る』という小説を、平成も終わる今、角川さんがホラー大賞に選んだことに、大きな大きな意義があると思うので。