「作家性は爆発しているが」来る Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
作家性は爆発しているが
見た瞬間に これは中島哲也の映画だ と見た人みんながわかる作品だった
個人的には中島哲也作品の特徴は人間の一枚皮を剥いだ先にある邪悪さを描き出す時の音楽と色の使い方と編集テンポに溢れる 独特のポップセンス もっと言うと それらが醸し出す 邪悪なカラフルさ にあると思うんだけど、今作もそれが随所に散りばめられている
色々な作品(しかも原作付き)を撮りながらも全作に共通してこの作家性がぶち抜かれているのはいつも見ていて凄いなーと思う
(ティムバートンの映画を見た時の感じに似てる)
ただ、その作家性がこの映画にあっていたかと言われると… 個人的には上手くいっていないように感じる箇所もあったりした。
未読ながら調べたところ、原作からは大きな改変が施されているようなのだが、今回の話だと、あの夫婦は色々あったけど結局この映画で語りたかったのは岡田くんの部分だけでした という風に見えてしまいかねない。
改変によって 中島哲也作品 らしい味わいは増えたけど
話の輪郭が歪んでしまった感は否めなかった
積極的に話の全体像をボヤかしに行っているというのは間違いなく意図としてあるんだろうけど、ぼやかしすぎで 夫婦 と その他の人たち の関係がストリーリー上で有機的に結びついてないように感じてしまったのが個人的には一番引っかかってしまった。
妻夫木聡と黒木華の二人が 中島哲也テイスト にバッチリハマっていただけに残念。
終盤の祈祷バトルシーンはエンターテイメント性の追求という意味では個人的には大いにアリな試みだったと思う。 いっぱい人死んだけど結局なんだったこれ… という雰囲気はあったけど、その部分のぼやかしはこの映画にあってたと思う。
あと個人的にはこのシーンの 松たか子のパンチ すばらしかった。 作中最強キャラとして堂々たる右ストレート。
まぁこれだけ作家性爆発させる以上 多少の歪みは 織り込み済みなのだろう。非の打ち所がない映画を作るのではなく 自分が追求する物を作り上げる というスタンスは素晴らしいし、何よりこれだけスター出まくりの日本映画でここまで我を通す作品を作り上げたというのは本当に凄い。噂でも聞いたことあるがこの監督、相当癖が強そうである。
映画は監督のものである という側面を存分に味わった一作だった。