「最初から最後までまで鳥肌たちまくりの面白さ」来る まつこさんの映画レビュー(感想・評価)
最初から最後までまで鳥肌たちまくりの面白さ
今年の5本に入るくらいの名作、そして中島哲也監督の真骨頂であり最高傑作でした。
ストーリーや予告編を見るとホラー映画か、と思うような内容。実際観てみたら、「貞子VS伽倻子」「世にも奇妙な物語」「トリハダ」「放送禁止」「怪談新耳袋」の要素をとても上手く混ぜて中島監督色に染め上げた最高のエンターテイメントホラーで、物凄く満足する作品、なのですが…。
ホラー映画の要素が強い映画ではないと思いました。観たら分かると思います。この映画、「ホラー映画」というくくりではありません。というか小説読んでる人なら分かると思いますがそのくくりにはとどまらない内容でした。
家族や子ども、子育て、現代の人間関係に関する社会問題を超スーパー浮き彫りにしてガツンと世間に突き付けた社会派人間ドラマサスペンスじゃないかなあ。特に子どもに関する要素が色濃い。
「コウノドリ」シリーズを見て沢山泣いて色々考えさせられた親達や視聴者の人達がこの「来る」を見てどんな感想が飛び出すのか凄く聞いてみたいな。
連日のようにニュースで取り上げられる、親の子どもに対するとても嫌な内容の事件、ああいうニュースはえげつない詳細を何度も何度も繰り返し毎日伝えてくるけれども、それをしつこく詳細を伝える事で果たしてそういった事件は無くなるのかな?と疑問に思っていた。あのニュースを流すよりも「来る」を流して世間の親やこれから親になる人に根本的な部分から啓蒙したほうが良いんじゃないんですか、と思ってしまった。親だけではなく、世界中の人が道徳の授業の時間を改めて設けて、この映画を観た方が良いと思う。
こんな事書きましたが、本当映画としてのエンターテイメント性もめちゃくちゃ優れているんです…。前作の中島監督の「渇き。」「告白」などを観ても思いましたが、原作本を面白い映画へと昇華させるのマジ上手いよこの監督。既存の作品を映画化、実写化することの長所を最大限に活かすことに長けてる。相変わらず…凄過ぎ。始まった瞬間から最後の最後まで、マジで目が離せないし、結構長い映画ではあるのにその時間がきちんと必要だったと感じさせる濃厚で丁寧な作りで満足感満腹感が半端ないよ。いくらでもお金を注ぎ込みたいと思うような作品ですね。
キャストも一人一人演技とも思えないような演技とキャラクター設定が良い、誰も浮いてない、誰も置き去りにされてない。俳優達にとって、この作品に出れた事は本当誇らしい事だし代表作になったと思う。
特に岡田君…!!!この数年間、この10何年間、どっしりとした一本筋が通っている心も体も強い男の中の男役や歴史上にいたマジ強え凄え男役を散々やってきて、むしろもう我々が死ぬまでにこういった役を演じる岡田君しかもう見れないんかと、岡田君に対して絶望を抱き彼が出てるだけでその映画を観るのをやめてしまう映画ファンもいたんじゃないかという謎の呪縛に縛られているなあと勝手に思ってました。
そんな呪縛をこの映画で、中島監督が解き放ってくれた…まじ拍手です喝采です素晴らしい。今回のようなクズのフリー記者みたいな役とかさ、池松壮亮・リリーフランキー・柄本時生とかが率先してやってるような役とかさ、もっとガンガンやればいいしそれが功を奏してもっと色んな種類の映画や監督からお声がかかるだろうし(大人の事情も勿論色々あるんだろうけど)これを機に世界が広がるといいな…。岡田君の役がいなかったとしてもこの映画はただの謎なホラー映画として成立はするんだけど、途中で岡田君(フリー記者)・小松菜奈ちゃん(独学霊媒師)・松さん(本業霊媒師)が出てきたところから物語が10倍ぐらい面白くなっていって、進めば進むほど色んな意味で鳥肌止まらずゾクゾクしていくんです。
とても辛い嫌〜な人間の本性が言葉の節々とか空気感で伝わってきて本当に気持ちが悪い胸糞悪いところも多々あるんだけど、決して他人事ではないし日本人の多くがこの病名を持たない病気に侵されているから、ギクッとする人も沢山いると思う。この作品のメインでもある正体不明の謎の怪物は(ある種ネタバレですが)絶対その病気が呼び寄せているものでもあるので、よく大人が子どもに「これを守らないとお化けが迎えに来るよ〜」と軽い脅しをしたりするけど、それと一緒で大人達にはこの「来る」を見せて、人の気持ちを考えない行動をし続けるとこんなに怖い怪物を引き寄せるんだよ、と、とても真面目に教育をし直した方が良いと思います。
あーマジ面白かった…泣きながら夜道歩いて帰ったけど、あの余韻も最高だね。面白い映画ってやっぱ大好きっす…。