「立体的に広がる物語」来る 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
立体的に広がる物語
青木崇高の演じる民俗学者にこの作品のヒントがある。民俗学というのは有名な柳田国男や折口信夫が研究したことで知られている、各地に伝わる物語や風習にまつわる考証である。
予告編が表現していたとおり、出身地の言い伝えが大人になってもずっとついて回り、いつしかエネルギーを蓄えて強大な邪悪さになっている。そこに人間関係の歪みが加わって、物語は立体的に広がっていく。
岡田准一に依頼する様子といい、松たか子の登場のタイミングといい、十分に考えられた構成で、自然で無理がない。だから怖さもストレートに伝わってくるし、スクリーンから目が離せなくなる。
どこか「リング」に通じるような日本的な、因習というか、多くの日本人の心に共通するような郷愁みたいなものと一緒になって存在する恐怖がある。思い出と恐怖が一体で切り離せないのだ。柴田理恵らの怪演もあって、現実離れしているのに本当にありそうという、絶妙なホラー映画になっている。
数日前に海外のホラー「ヘレディタリー 継承」を観てがっかりしたので、この作品によってホラー映画の評価が少し持ち直した感じである。海外の人に理解されるかは別にして、なかなかに面白い作品であった。
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