「役を「生きる」ことの難しさ」半世界 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
役を「生きる」ことの難しさ
旧友たちの絆、過去の極限体験で心に傷を負った仲間といった要素は「ディア・ハンター」や「ミスティック・リバー」とつながりを感じさせる。稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦による幼馴染三人の物語は、男同士の友情で本当にありそうなエピソードや、そうであったらいいなという願望めいたものを巧みに紡いでいく。
稲垣は「十三人の刺客」の怪演で役者としてのポテンシャルを感じさせたが、初の単独主演映画となる本作でも、地方の山中で働く炭焼き職人という一見かけ離れた役を意外に違和感なく演じている。ただ気になったのはその声が良すぎること。歌手歴が長いので低域を豊かに響かせる発声は習い性かもしれないが、なんだか劇場の客席へ声を飛ばす舞台俳優のように思えてしまった。役を「演じて」はいるが、映画という世界の中で役を「生きている」ようには感じられないのだ。長谷川、渋川、池脇千鶴ら実力派の中でちょっと気の毒ではあったが。
コメントする