「良作。」あの日のオルガン sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
良作。
とにかく、子どもたちが自然体ですばらしい。
指示通りに演じさせることよりも、子どもたちの自然な姿を引き出すことに重きを置いている制作側の姿勢が見て取れる。なので、大原櫻子演じる「みっちゃん先生」との関わりの場面は、そこで特別な出来事が起きなくても、観ているだけで胸を打たれてしまった。
奥村佳恵が焚き火をしながら、大原櫻子に対して「みっちゃん先生の周りには、いつも笑いがある。文化的生活ってそういうのじゃないかな」と語るシーンがいい。
奥村のセリフ通り、文化とはすなわち環境で、環境の最も重要な要素は「人」だと思っている。なので、戦時下の保育士に視点を当てた今作は、自然と平時の保育・教育のあり方や、ひいては人々の文化への意識をも同時に浮かび上がらせる。
自分が思い出したのは、コロナ禍での文化芸術に関わる「不要不急」論争。文化芸術が、当然のごとく不要と断じられてしまった状況は、戦時下の集団心理が、現代の我々の意識とも地続きであることを感じさせられた。
熊谷への空襲が8月14日深夜だったと聞き、「長崎ー閃光の陰でー」に出てきた、「あと一週間早く負けていれば」というセリフを思い出した。
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