「かなりがっかり」トラさん 僕が猫になったワケ ぱっちんさんの映画レビュー(感想・評価)
かなりがっかり
北山くん及び原作ファンです。
動いて演技をする北山くんをただ見るには最高かなと思いますが、内容は原作ファンとしてかなりがっかりでした。
以下、ネタバレを含む原作との相違点で気になったもの。
・主人公の寿々男が描く漫画は板場先生が描かれたわけでもない、原作で寿々男が描いた「せきらら君」とはまったく違うタイプのもの。
・ホワイテストが飼われているのが中学生の男の子ではない上、トラさんと同じ元人間で、最後消える。
・トラさんの滞在期間が1年ではなく1ヶ月と短すぎる。
・ミユが寿々男にまったく似ていないし、性格もキツい。父である寿々男に死んじゃえとか言う。
・そもそも寿々男も原作より頭が悪い。
・裁判長が信じられないくらい淡白。
・筧監督のお家芸である動物仮装(今回はネコの着ぐるみ)は慣れれば割と見られましたが、人間サイズのせいで無理矢理な描写がちらほら。
滞在期間が1ヶ月と大幅に短縮した割には寿々男の危機感があまりにも薄く、全体的に行動が間延びしている点や、高畑家の仲の良さを示すような交流の描写も薄く、またミユがやたらと寿々男に反抗的で、感動ものとして全然共感できませんでした。ナツコもミユもそこまで泣く?と思ってしまいます。(2人の演技力が素晴らしいだけに、尚更)共感できないので、なんだかわからないが親子がすごく泣いてるな…演技力凄い…とかなり他人目線で見てしまいました。
原作の泣き所は、寿々男が死んでから寿々男の家族(特に寿々男の母とナツコ)が様々な思い出を語りながら、やはりクズでも良いやつだったと改めて死んでしまったことを悲しむ点にあると思っており、そこがごっそりなかったのも驚きました。
原作にいない要潤は頑張って漫画描いてチェンバロまで弾いていたのに過労で倒れるし、原作にいない担当さんは全然話に関わらない割にすごい主張してくるし、裁判長とはいつまでも仲良くならないし、そもそも裁判長全然オニアツじゃない冷めた人だし、小さい「あれ?」があまりにも随所に散りばめられていて、悪い意味で気付いたら映画が終わっていました。
「あのシーンないの!?」は原作ありの映画にはつきものですが、このシーンがなくてどうやって話を理解すればいいの?と、このオリジナルのシーン必要?がそれぞれ多すぎます。
また原作では、最後人間になり漫画を描くシーンは何時間かに分けて最終回を描きあげるのですが、夜中から朝にかけてあのページ数、あのボリュームの漫画を下書きからベタ塗りまで、1人で終わらせるというあまりにも現実離れした力技を披露するところ、あの奇抜なネコスーツよりも断然非現実的でした。
あれだけ筆が早く行動力もあるのに、なぜ何年もズルズルと引きずり続けていたのか意味がわかりません。
個人的にはあのアホな寿々男がせきらら君というアホな漫画を描いている、という設定が好きだったので、なんだかかっこいいスマートな漫画を描いているのも地味にショックでした。ネコマンじゃなくてオッちゃんとパイちゃんのグッズだったら買ってたのに。
感動させてくれるシーンは薄いのに漫画を描くシーンだけ妙に間延びしていて不必要に長く、さすが監督が激推ししている漫画家を使ってるだけある、激推しされてるなと思いました。
細かい笑いもあったし、何よりも自分が北山くんファンだったこともあり見ていられましたが、ただの原作ファンとして見に行っていたらかなりの苦行です。北山くんの映画初主演が決定したときから楽しみにしており、演技も初主演とは思えぬ落ち着きと慣れている感じがとても良かったので、尚更脚本にはがっかりしてしまいました。
最後良い音響でキスマイ全員の歌声が聞けたのはよかったかな。
内容がよければ何回か行こうと思っていましたが、トラ泣きもなければ2回目もなさそうです。