「あざとさゼロなのになぜか泣ける映画」トラさん 僕が猫になったワケ そらさんの映画レビュー(感想・評価)
あざとさゼロなのになぜか泣ける映画
キャストに惹かれて劇場へ。
予告を見る限りではトラさんの格好に一抹の心配もあったのだが、実際見てみるとその心配などまるでなかったかのようにリアルに感じた。
猫でも人間でもない、こうもファンタジックなビジュアルなのに違和感なく物語に入り込めたのは、やりすぎず、かといって観客を置いてけぼりにせず、猫らしい動きと人間らしい心情がバランスよく表現されているからだろう。
主人公の寿々男は憎めないダメ男というままよくある設定だが、中盤まで"スズオ"ならぬ"クズ男"がよく似合うほどのクズっぷりを見せる。
表情筋の動きが伊達ではない。本当に北山くんはギャンブラーなのかと思ってしまうほどである。
そのクズさは死んで"トラさん"となった後も一向に治る気配がないのだが、あることをきっかけに本当のことに気づく。
だが、、、遅い!!遅すぎる!!!
そのあまりにも遅すぎるタイミングで気づいたことで、寿々男がどう奇跡を起こすのか…は、さすがにネタバレになるのでぜひ劇場で。
お涙頂戴ではなく、控えめに控えめにテンションを上げていき、自然な涙を誘うのがこの映画の良さだと思う。
家族の絆、大切にすべき本当のことを教えてくれる。
また、エンドロールで流れる主題歌が秀逸。
上辺だけを舐めたようなよくあるポップスではなく、そっと寄り添うような歌詞が絶妙に涙を誘う。
初主演の北山くんのリアル猫すぎる演技もさることながら、脇を固める俳優陣の演技がすごい。
多部ちゃんはとにかくかわいくて健気で、バカリズムさんはバカリズムさんである(ナニソレ)。
それから、何といっても、
要潤を無駄遣いしすぎ!!
なんであんなことやこんなことをさせといて○○させちゃうんだ!(ネタバレ防止のため伏せ字)
その無駄遣いっぷりも見届けてほしい。
強いてひとつだけ言うならば、もう少し尺を長くしてもよかったのではないかと思う。
収まりが悪いとかそういうことではないのだが、見終わった後に「あれ、結構短かった?」と驚いた。
映画らしい映画というと、波が小さく重いテーマを扱ったようなものやド派手でハチャメチャなものが目立つけれど、
こういった、家族みんながそれぞれ楽しめるポイントを抑えつつ、優しく背中を押してくれる、感動できるような映画がもっと増えてほしいなと思う。
これから観に行く皆さんはハンカチを忘れずに。
うっかり忘れてしまったので困りました。
私、あと2回は見に行きます。