劇場公開日 2018年6月30日

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「個人的には1勝1敗1分け」パンク侍、斬られて候 ぷらさかさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5個人的には1勝1敗1分け

2018年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

原作未読。
原作に忠実らしいので基本は原作をベースに、前半はクドカンテイスト、後半は石井岳龍テイストを押し出した印象を受けた。
正直、「五条霊戦記//GOJOE」の頃から石井岳龍(聰亙)監督の映像のセンスがまあ肌に合わない。当時ガキなりに自分で借りた映画は必ず最後まで見るというスタンスでいたつもりが、あれだけは映像が合わなさすぎて完遂することができなかった。それ以降石井岳龍作品は数本見ているがあの時ほどのアレルギー反応でないにしろ、映像への違和感は拭えないまま。
で、本作。宮藤官九郎のポップな脚本とこの辺りの演者陣ならば石井岳龍作品への苦手意識を克服できるかもしれないという淡い期待と不安を両方抱いていたため、珍しく多少予習していった。やたらめったら種類のあるスポット予告(最近のメジャー邦画の流行り?)、映画サイトのネタバレなしレビュー、あとは日経新聞の作品評も後押しに。
これが良くなかったのか、予告映像の情報が多かったためかあまり作風に見合う驚きを受け取れなかった。ネタバレを踏んだつもりはなかったが、自己責任といえ残念。
前半は時代劇テイストにじわじわ入り込むクドカン台詞とキャラ造形がなかなか笑える。
中でもゆとり感溢るる染谷将太、食えない狸オヤジだが小物ならぬ中物くらいの味つけが上手い豊川悦司、あとは初めて知る役者だが若葉竜也の白痴ぶりは堂に入っていた。東出昌大の使い方はこれが模範解答かもしれない。
後半は「石井岳龍の映像」がこれでもかと展開される訳ですが……平成も終わる頃合いにこの質感のCGというのは、もうそもそも石井岳龍がこの手のチープな質感のCGが大好きなのか、邦画でもだいぶ進化しているCGチームとの人脈がないのか、どちらだろう。何となく両方のような気がしてならない。
少ないが殺陣というかアクションはギャグだけでなく結構きちんとやっているっぽいが、スピード感はあるがいまいち何をやっているかカメラが捉えきれてないので、アクションの撮り方か演出の問題か。
綾野剛は主人公だが割と中途半端な立ち位置のキャラクターで、かなりギリギリ綱渡りで乗り切って何とか成立させていた印象。
北川景子はTV女優の印象が強かったが、ラストシーンではなかなかの表情を見せてくれる。ただ出来ればあの一瞬の表情のテンションをあのシーン通じて維持してもらいたかった。いずれにせよもっといろんな映画に出ていろんな監督に接するべき女優だと思った。
総評としては、宮藤官九郎脚本と演者、町田康の世界観に触れられたことで1勝1分け、石井岳龍の映像への苦手意識を結局克服できなかった点で自分の中で1敗。
町田康はイかれてるのかもしれんが何本か見るたび石井岳龍自体は「正気の頭」でイかれたものを作ろうとしているように感じるので、そこが昔から鼻白んでしまうのかもしれない。昭和の時代ならいざ知らず、現代日本で継続的に実写映画の監督の仕事ができている人間にほんとにイかれてる奴はいない。創作する上で否応なくイかれてしまうタイプの人間は、同じクリエイティブ系でも実写映画の監督ではなく違う職業をしている。イかれてしまうっていうのは、創作するにあたって自分の人格が危機に瀕するくらいトリップしちゃうって意味だが実写映画の場合、監督がこうなったら作品は完成しないので。
余談。本作にも関わっているスタッフが話すのを聴客として聞く機会に恵まれたが、客が少数なのをいいことに邦画界についてぶっちゃけまくりで笑った。最近の邦画の漫画原作の多さは映画人も映画ファンもそれぞれ意見があるだろうが、それにしても自身が関わる作品を客前であそこまで直截にこき下ろすとは驚いた。一瞬ここは仲間内の飲み屋かと。本作については自身で満足いく仕事が出来なかったような話もしていたが、クリエイティブ業の映画人の持つジレンマや悩みも、案外会社員のそれと本質的には大差ないのかもしれない。
つまり、日本の実写映画は真面目な才能が集まって作っている。ここに狂わざるを得ない天才はいない。だからこそ邦画は「クソ真面目な職人性」すなわち「細部への病的なこだわり」をもっと映像に活かすべきと思うが、何にせよ全体をみながら細部にこだわり作品をまとめ上げ、人と金と客を動員する映画というのは特殊な表現形態だからなあ。完成する段階まで人と金を任せられる監督という職業は今の時代、強権的なカリスマ性よりも人間的魅力が求められる。
そんな訳で、原作者が昼間っから焼酎浴びて時代劇の再放送を見ながら酔いに任せて書いたらしい小説を、実写映画という形で実現する試みが既に地獄の食い合わせだと思うのだが、別の監督、あるいは別の表現形態だったらどうだったかという気はする。原作ファンの感想も「忠実で面白かった」というのと「もっと弾けたものを期待してた」とで二極化してるようなのでそのうち原作を読む。

ぷらさか