「美しく生きられなかった人達の話」愛しのアイリーン Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
美しく生きられなかった人達の話
ヒメアノ〜ル の監督の映画で しかも onちゃんことヤスケンが主演 というわけで鑑賞
とんでもねぇ映画だった
田舎の閉塞感を抱えながら生きていく中でもはや 性欲以外にさしたる喜びを得られなくなってしまった主人公、お金の為に人生をその男にあげる羽目になった(実際そうなのかは置いておいて、周りからはそう見られているし、自分もそう感じている)フィリピン人の少女、そして主人公を溺愛しこの世界で一番、誰よりも幸せにしなければ気が済まない母親 の3人を中心に話は進んでいく。
この3人、端的に言って一般常識の視点から見るともはや 歪んだ生き方 しか選択できなくなっている状態 の人間であり、しかも3人それぞれが人生に辛うじて見出している 生きる意味 みたいなものも全く異なっているので、とにかく何もかもがちぐはぐ
コミカルに描かれてはいるものの、世界というものが残酷に、冷淡に彼らを追い詰めていく様子は見ていてとにかく辛い
ただこの映画ではそんなボロボロで バラバラな 彼らの人生が一瞬混り合う瞬間をとにかく美しく 尊く 愛おしく描いていた それがとにかく感動的だった
おそらく劇中では 中盤とラストに その瞬間があったと思うのだけど、そのどちらも 美しくなんか生きられなくなってしまった彼らの人生が 悲しくそれでも 光り輝いていて心を鷲掴みにされる
特に途中の濡れ場シーン! あんな感動的でカタルシス全開な濡れ場見たことない 血みどろに薄汚れながら始めて結ばれる二人の姿がとにかく美しかった
しかもこの映画、怖いというか凄いのは安易に救いなど与えないところ 中盤以降性欲と恐怖に飲み込まれた果てに主人公が迎える最期は尊厳などかけらもない 惨めで 悲惨なものだった 主人公の死に方として映画史でも中々ないレベルで惨めだったと思う
でも、救いなどないと思えてしまうほど生きる事のままならなさを痛々しく突きつけてくるからこそ、あの時の彼らは美しかったのかもしれない
結果的にはこの映画は生きることの救いを間違いなく感じるお話だった
あと、ヤスケンの演技の重厚さはとにかく圧巻!
ドラマの重版出来の時も思ったけどヤスケンは単純な演技の質の高さだけでいうとチームナックス内でもダントツ というか日本でここまで心のうちから湧き上がってくるような演技をする役者は中々いないと思う
表情がとてもいい
原作は未読だけど、設定見る限り伊勢谷友介と河井青葉の役は元の漫画とはキャラ造形が少し違ったのではないだろうかという気がした 彼ら二人もやはり 歪んだ生き方しかできなくなってしまった という点で主人公たちと重なるように描かれてたと思う
しばらくは彼らのことを思い出して胸が キュッ となりそう
全然素敵な話じゃないのに、今年見た中で最も美しい瞬間のあった 素晴らしい映画だった